地方発ラーメンチェーンが中国で成功した理由。東京では知名度が低いのになぜ?

桑原靖代表取締役社長

初の中国国内ショッピングモール出店となる大連久光百貨店と「博多ラーメン味の蔵」運営会社であるシンコーの桑原靖代表取締役社長

 ハーバー・ビジネス・オンラインでは、これまで何度か中国やタイなどのラーメン事情について報じてきた。 ●「餃子の王将」だけではない。日本のラーメン店が中国進出に失敗する要因(http://hbol.jp/15230) ●値上げ誤報の「幸楽苑」、タイでは99バーツを堅持。タイ人、在タイ邦人の間でも人気(http://hbol.jp/16686)  このように、失敗することはあるものの、ラーメン自体はもはや世界中の街で見かけるようになりつつある。中国で生まれた拉麺は、日本で「ラーメン」へと進化し、世界では日本のソウルフード「RAMEN」と認識されている。もはや一過性のブームではなく、日本の食文化として各地で根付きつつあるのだ。  そんな中、日本の地方発のラーメン店が、東京や大阪を経由せずに世界へ飛び出し、ブランド化して、店舗数を増やし、その相乗効果で日本の店も増やすような現象も起きている。  その1つが、広島県福山市に本社がある『博多ラーメン味の蔵』(※個室居酒屋チェーンとは別の会社)である。全国的な知名度はない味の蔵は、2005年11月に中国大連に1号店をオープン。現在、大連で5店舗を展開し、さらには、厦門や南京、上海、徐州、武漢と店舗を広げている。中国展開と並行して、シンガポールやカナダへも出店を果たしているほか、2014年11月には東京1号店もオープンし、2015年1月の時点で全世界で32店舗(内日本国内20店舗)を展開するに至っている。  同チェーン店を運営する株式会社シンコーの桑原靖代表取締役社長に同店の出店戦略について聞いた。

中国で成功した秘訣は「ブランド化」

厨房で湯気を上げるスープの寸胴

厨房で湯気を上げるスープの寸胴

「大連進出の2005年当時、味の蔵は、日本でも中国でも知名度がなく、ブランド力は、まったくない状態でした。そこで、まず考えたのは、ブランドを確立させること。そのために、手間とコストがかかっても骨から炊き上げる本物の豚骨スープを日本で磨きあげた技術で作ることから始めました」  本物のスープ作りに欠かせない水は、軟水器を導入し、硬水を軟水化して上質な水を確保した。豚骨も日本より小ぶりで価格も高かったが、厳選して良い物を選んだ。 麺も、既製麺で済ませることなく、他にはない独自麺をクラタ食品有限会社(福山市)と協力して作るなどして「味の蔵ブランド」を築き上げていったのだという。もちろんこれらの工程でコストはかさんだというが、それを引いても大きなメリットがあった。  なにしろ、中国ではニセモノが氾濫しているため、実は中国人は「本物」や「ブランド」が大好きなのだ。『味千ラーメン』が、中国人の顧客をガッツリ掴んだのは、そうして作られた「本物」であることや「ブランド力」の賜物と言える。  しかし、他の中国進出企業も、そうした努力はしてきたにもかかわらず失敗した企業もある。  桑原氏は、中国で成功するための4つのポイントを指摘する。 ⇒【後編】に続く http://hbol.jp/20662 <取材・文・撮影/我妻伊都> 【DATA】 株式会社シンコー 〒729-0104 広島県福山市松永町5丁目5番25号 http://www.shincou.com/