タイの幸楽苑第1号店であるエカマイ店
2014年11月27日に日本の『幸楽苑』が290円のメニューを廃止するというニュースが飛び出し、幸楽苑ファンの間に衝撃が走った。しかし、12月8日には幸楽苑側から正式に誤報だという発表があったと報道され、ファンらはほっと胸を撫でおろした形となった。
発展著しいタイにも2012年7月に幸楽苑が1号店を開いている。日本同様に安く、「中華そば」が99バーツ、オープン当時の為替レートで247.5円と日本の税込み価格よりも5.5円も安い値段だった。円安になっている2014年12月現在のレートこそ360円と割高だが、99バーツという値段設定は他店と比べれば今でも非常に安い。件のニュースが話題になると、タイにある幸楽苑でも99バーツ設定を取りやめるのでは?と一部で話題になったが、そんなことはなく、タイ在住の幸楽苑ファンもほっとしている。
そんなタイ、特にバンコクは今、東京など比ではないほどのラーメン激戦区になっているのである。日本の有名ラーメン店の進出が相次いでいるのだ。
タイには昔から米を原料にした麺などがあり、タイ人も日本人同様に麺好きが多い。そのため、ラーメンは一般タイ人にもわかりやすく、飲食の他ジャンルよりは出店しやすいのだ。
激戦区になったことで日本中の有名店が楽しめるようになったことはメリットだが、設定価格が異様に高いことが残念なところ。進出ラッシュが始まった2008年頃より前は日本人経営の店でも100~150バーツ程度が普通だった。今の有名店は200~300バーツが相場だ。300バーツは2014年12月の平均レートで約1100円にもなる。はっきり言って高い。さすがに有名店でも1000円超を出すのは躊躇してしまう。
日本ラーメンの進出の先駆けは北陸などで有名な『8番らーめん』で、1992年に第1店舗目を構えている。今ではタイ全土に店舗があり、タイ人でも知らない人はいない。そんな8番は今でも「8ちゃん麺」で63バーツ、約229円と安い。タイ人向けなので日本の丼の半分くらいなのでは? という量だし、味もかなりタイ人に迎合してしまっているが、総合的に「この値段ならまあ文句はないかな」という無難な感想に落ち着く。1000円を超えるならハイクオリティーを求めるし、200円台なら文句を言うのは憚る、というのが客の心理である。
そこに現れたのが幸楽苑の99バーツという絶妙な価格設定だった。ほかに「極旨醤油らーめん」などもあって、これは139バーツ、約506円となっている。タイ人にとっても99バーツや139バーツくらいなら、仮に高いと感じたとしても「日本料理だからこれくらいはするよね」という許容範囲内だと思う。
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「極旨醤油らーめん」139バーツ
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タイの幸楽苑第1号店であるエカマイ店の店内
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「中華そば」99バーツ(日本円で360円程度)
タイの幸楽苑は日本の味をほぼ再現できていると思う。有名店のように奇をてらったものではないし、自社工場もタイ国内にあるので、8番らーめんのように一定のクオリティーを保てている。しかも、安いから構えることもなく、気持ちが批判的になるというストレスもない。それに加えて量が日本とあまり変わらないのもいい。8番の「安いから仕方がないか」というのと違い、「安いのにがんばっているな」という印象が持てるのだ。
タイ幸楽苑はすでにタイ国内に5店舗(2014年12月現在)ある。これまでタイ人にとっての日本ラーメンの基準は8番らーめんだったが、幸楽苑がスタンダードになる日も近いかもしれない。まあ、一在住日本人としてはそんなことより、99バーツらーめんをずっと続けてくれることを願うのみだ。
<取材・文・撮影/高田胤臣 参考:タイ幸楽苑
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