コンビニオーナー、牛久入管被収容者、処分京大生……虐げられた人々が日比谷野音に集結

「闘う労働組合」は甦るのか

 この記事で取り上げてきた上記の発言は、集会のほんの一部に過ぎない。他にも多種多様な立場から問題が投げかけられ、その全てをここで取り上げることは到底できそうにない。  11月全国労働者総決起集会は「闘う労働組合の全国ネット」を目指して呼びかけられている。集会に参加してみると政治的な主張を掲げる参加者が多い印象を受けた。自らの力で社会を変えていこうとする「労働者」の集会だったといえる。  労働組合が社会で果たしてそこまでの力を持てるのかと疑問に思う人もいるかもしれないが、かつては1960年の安保闘争で安保改定反対を掲げた6・4ゼネスト、不発に終わったものの総評の議長が時の首相・池田勇人と首相官邸で会談し、賃上げ要求を通した1964年の4・17ゼネスト、基地を残したままの沖縄返還に反対して行われた1971の11・10日沖縄ゼネストなど、労働者の運動は日本の近現代史にその足跡を残してきた。  集会側が言う「闘う労働組合」の運動とは、その後に続くことを目指すものである。関西生コン支部執行委員・荒川さんの発言や、コンビニ関連ユニオン委員長・河野さんの発言からはそうした決意が感じられた。  そしてそのような運動は国際的な連帯を目指すものだということも、今回の集会で強調されていた。集会には韓国・台湾・ドイツの労働組合が来日して参加し、その他にもパンフレットには香港・中国・アメリカ・トルコの労働組合からメッセージが寄せられていた。  今回の集会は改憲発議を目指す2019年の臨時国会中に行われたものであり、主要な政治的主張は「改憲阻止・戦争反対」だ。戦争は常に二つ以上の国家間で起こるものだという基本的な前提に立ち返って考えてみた場合、当然ながら動員されるのはそれらの国家の国民であり、労働者だ。だから労働者という同じ立場で連帯すれば戦争に向かう道は止められる。集会側はこのように主張して国際的な連帯を強調している。デニズさんが参加しアピールしたことは、外国人へのヘイトや差別を許さず連帯しようとする集会の立場を物語っている。

「労働者」はこれから働く若者も含まれている

 さらに集会側の主張として読み取れるのは、「労働者」とはいま実際に社会に出て働いている人のみではなく、将来的に社会で働かなくては生きていけないすべての人を指している概念だということだ。その中には高校生や大学生など、広い意味での学生も含まれている。  今月初めに大学入試共通テストの英語民間試験実施が延期されるとの報道があった。世間からの批判によってこの試験が問題だらけであることが暴露された結果だ。英語民間試験に対して上がった批判の中には実際に試験を受ける現役高校生の声もあり、注目を集めた。社会に出て働いていない学生とはいえ、高校生なり大学生なりという立場を与えられており、それは社会で決められた条件に左右される。だがそれは一方的に与えられるものではなく、学生が社会で声を上げていく中で変えられる。  そしてそのような彼らの存在は広い意味での「労働者」だというのが集会側の主張であろう。それは京大生の北村さんに発言の機会があり、彼が処分を「全京大生、全国の学生、全社会、世界中の人達に関係ある問題だ」と語ったことに示されているように思う。  最近は日本に限っても、佐野SAでのストライキ、ウーバーイーツユニオン結成など、労働組合に関連したニュースを見る機会が増えている。集会が掲げる「闘う労働組合」を甦らせようとする試みは、果たして成功するのだろうか。今後もその行く先を見守っていきたい。 <取材・文/鈴木翔大>
早稲田大学在学。労働問題に関心を持ち、執筆活動を行う。
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