最高裁の判決が下ってからそれに抗議する動きが活発となった。中心的組織は「共和国を守る会(CDR)」と「民主ツナミ(Tsunami Democràtic)」である。
両組織は、Twitterや、テレグラム(セキュリティ度が高いと言われるメッセージアプリ)、WhatsAppを使って30万人とコネクトできるようになっているという。
この二つの組織はこの活動の核となるべく反体制派から400-500人を集めた。メンバーはスペイン人を柱にイタリア人、ギリシャ人、ドイツ人、オランダ人らが加わった。反体制派は異なったイデオロギーの持ち主で共通しているのは市街ゲリラ戦に長けた者たちであるということだ。黒っぽい色の衣服にヘルメット、サングラス、マスクで顔を隠すブラック・ブロックと呼ばれている者たちだ。
また、彼らに加勢すべく前線に1500人余りが加わって総勢2000人余りが警官に挑んで一斉に攻撃する。その背後には1万人くらいが控えている。彼らの多くは学生だ。彼らが作業を分担して前線を支援するのである。金槌で歩道を破壊する者。それを細かく砕く者。それを盗んだスーパーのカートに積んで前線で警官を攻撃している者に手渡す。更に火炎瓶の投下、車やごみのコンテナーへの放火、店舗や銀行支店のガラスを破損し、店からは商品を強奪。警察隊に駆逐されそうになると、分散して攻撃場所を別の所に移す。
警察の止まっている特型警備車の車をパンクさせ、こん棒などで後ろのドアーをこじ開けようとしたり横転させて放火しようとした者もいた。
暴徒に加わった学生は身分証明書は持参せず、警察に拘束された時のために唯一腕に書き込んでいたのは弁護士の電話番号だという。また、拘束された若者でも未成年者もいて、「投げた石は小さい石で、僕にくれたんだ」と尋問した警官に無邪気に答えたそうだ。
警察隊との市街戦とは別に、一か所を具体的に包囲して警察隊の警備を困難にさせた。初日はエル・プラッツ空港に侵入して混乱させフライトを妨害して100便以上のフライトがキャンセルさせた。その翌日は中央政府代理大使館、三日目は内務省を包囲といった行動を取った。エル・プラッツ空港に侵入した時には呼びかけに4000-5000人が応じたという。(参照:「
Cronica Global」、「
El Pais」)
一方、今回の騒動ではカタルーニャ自治警察とスペイン国家警察そして治安警察が連携して暴動に応えている点が注目されている。というのも、2年前の住民投票の時は自治警察とスペインの二つの警察とが対立していたのだ。しかし、今回は毎日午前と午後で自治警察の指揮のもとに国家警察と治安警察が会合を持って対策を練るという日課を繰り替えしている。
特に、自治警察は州政府の意向に沿うことなく治安維持という警察の本来の職務を遂行することに徹している。しかも、これまでベルギーにいるプッチェモンの護衛も自治警察が担当していたが、現警視総長はそれを禁止した。(参照:「
El Pais」)
ただ、1週間以上続いているバルセロナの暴動で商活動は甚大な損害を被っている。日中は問題がなくても、夕方から市街は危険状態になり店のシャッターを下ろすところが多くなっている。
ホテルはキャンセルが相次いでいるという。観光シーズンオフを利用して年金受給者を対象にした旅行団体からの予約もその7割が埋まらない可能性があるとしてホテル側は危惧している。
今回の騒ぎでカタルーニャの観光業界における損出額は現在まで3億1900万ユーロ(376億円)、GDPの0.3%の後退だとされている。特に運送業界の損害は甚だしく日毎2500万ユーロ(29億5000万円)の損出を計上しているそうだ。一時はフランスとの国境でスペインに入ることが出来ず16キロの長蛇の列ができたほどであった。
また、MSCなど主要観光フェリーもバルセロナ港への寄港を中止している。(参照:「
El Independiente」)
暴動も度合いは次第に小康状態となっているそうだが、この先もまだ当面危険は続くと警察は見ている。11月10日がスペインの総選挙で、それまでカタルーニャでの騒動が収まらないようだと現与党への票が減少して右派の票が増えると予測されている。特に、極右ボックスへの支持がさらに増える可能性も出て来る。