ライブハウスは「60万円」から!?「渋谷文化」にも訪れる「ジェントリフィケーション」

「再開発」と「街の個性」の両立という課題

 今回は3回に亘って渋谷・桜丘の再開発を取り上げたが、「再開発」と「街の個性」の両立が課題となっているのは渋谷だけではない。  演劇と音楽の街として知られる下北沢でも再開発により閉館となった劇場があり、「街の個性が失われる」として再開発の是非を問う裁判もおこなわれた。
再開発が進む下北沢駅周辺

再開発が進む下北沢駅周辺。景色が一変したところも少なくない。

 このほかに東京23区内だけでも、立ち飲みの街「京成立石」、賑わうアーケード商店街「武蔵小山」、「東上線大山」、東京タワーのふもとの街「麻布台」など、いくつものエリアで大型再開発によって個性的な街が消えようとしている。いずれの再開発も防災、バリアフリー化、踏切解消など数多くのメリットがあるため、新しい街が生まれることに対する期待も非常に大きい。  しかし、こうした各地の再開発による街の刷新によって「谷根千」や「アメ横」、「新宿ゴールデン街」、「渋谷のんべい横丁」や、個人商店が立ち並ぶ古い商店街などといった「都内でありながら強い個性がある古い街並み残るエリア」が観光資源として脚光を浴びるようになってきていることも確かだ。
飲み歩きの街としても人気の「京成立石」

飲み歩きの街としても人気の「京成立石」。
この商店街も再開発が予定されており「街区ごと消える」可能性が高い。

 東急グループが約3500億円もの巨費を投じておこなっている渋谷再開発。現在おこなわれている再開発事業は2027年度までに全面完成する予定だ。しかし、それらが完成した頃には、また「新たな再開発計画」も生まれているであろう。  H氏は「再開発自体(の賛否)は争っても仕方がないこと」であり、新しくなった渋谷や下北沢の街において「また新たな文化が生まれること」にも期待を寄せたいという。  再開発が完成した渋谷の街は、果たしてどういった「個性」を見せ、そしてどういった「文化」を生み出しているのであろうか。
桜丘地区の1期再開発後イメージ

桜丘地区の1期再開発後イメージ(東急不動産)。
かつて「あおい書店」「JTB」「上州屋」などがあった附近。街の姿は一変する。

<取材・文・撮影・図版作成/若杉優貴(都市商業研究所)>
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken
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