ライブハウスは「60万円」から!?「渋谷文化」にも訪れる「ジェントリフィケーション」

同じく路地と坂の「道玄坂・円山町」エリアに移転した店も

桜丘周辺のライブハウス・音楽ホール

桜丘周辺のライブハウス・音楽ホール。多くは再開発地区内にある。(筆者作成)

 桜丘の再開発地区にあるライブハウス・音楽ホールは6軒。2018年末より工事が開始された1期再開発エリア内には4軒のライブハウス・音楽ホールがあった。そのうち、ライブアイドルやネット動画配信者などサブカルにも強いライブハウスとして知られた「渋谷DESEO」とその姉妹館「DESEO mini with ヴィレッジヴァンガード」の2軒は、渋谷駅から少し離れた道玄坂・円山町への移転を決めた。  道玄坂・円山町周辺も、桜丘と同様に路地と坂で構成された街であり、それゆえ家賃も比較的安く、また「O-WEST」、「O-EAST」、「duo」、「VUENOS」、「club asia」、「Glad」、「Loft9」などすでに多くのライブハウスがあることでも知られる。ライブハウスは夜遅くまで営業することが多く、また店舗外に入場列が伸びるなど周辺環境にも影響を与えることがあるため、場合によっては近隣店舗や住民との調整も必要となる。そのため、以前からライブハウスが集積している道玄坂・円山町は、移転先の「第一候補」となりえたのであろう。  このほか、エレクトーンの生演奏ができる設備が特徴であったヤマハ系列の音楽ホール「ヤマハエレクトーンシティ」は渋谷を離れ、以前からヤマハの施設がある目黒への移転となった。
道玄坂・円山町のランブリングストリート

多くのライブハウスが集積する道玄坂・円山町のランブリングストリート。
DESEOが移転したのもこの通り沿い。

移転先が決まらず、休業のままの店も

 一方で、DESEOと同じ建物にあり、新人バンドの登竜門として知られたライブハウス「渋club乙-kinoto-」については、再開発の開始までに移転先が決まらず「一時休業」したままとなっている。  さらに、2期再開発エリアにもライブアイドルやサブカルに強いライブハウスとして知られる「渋谷Ruido.K2」、DJイベントなどに強みを持つ「渋谷Aurra」といったライブハウスがある。これらに関しては、2期着工が2023年度以降に開始予定ということもあり、移転先などについてはまだ発表されていない。
「Ruido.K2」がある建物

桜丘さくら通りにある「Ruido.K2」がある建物。2期再開発により解体される予定。
桜丘を拠点とする大手楽器店「イケベ楽器」も多くの店舗が1期再開発地区からここに移転したものの「再移転」になると思われる。

 桜丘にあるライブハウスのなかでも、「渋谷club乙-kinoto-」(以下、乙)は渋谷の音楽シーン、特にバンド文化を牽引するライブハウスの1つとして知られていた。取材に応じた音楽プロデューサーのH氏は「乙は尖ったバンド文化の創生に大きく貢献したライブハウスであり、単純にあの場所からなくなるだけでも寂しい」と語る。  休業前にはかつてこの地から育っていったバンドたちが顔を出すなど大きな賑わいを見せた乙であったが、閉館から半年以上が経過した現在も移転先が見つかったとの報告はなされていない。乙は近い将来「営業を再開したい」という意向を示しているが、大きな喪失感を味わっている音楽ファンも少なくないであろう。
「DESEO」と「乙-kinoto-」が出店していた建物

「DESEO」と「乙-kinoto-」が出店していた建物。

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「ジェントリフィケーション」で失われる街の個性
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