写真中央の氷川丸の奥がIR・カジノ予定地だという。gandhi / PIXTA(ピクスタ)
2019年8月22日、林文子市長が突如として誘致を表明した横浜カジノの問題。
前回記事では林市長の答弁に着目したが、今回は林市長に対する市議会議員の質問に着目したい。
今年6月4日、横浜市議会では
カジノ反対決議を求める請願が出され、不採択となった。横浜市議会は定数86に対して、自民党と公明党だけで過半数を占めており、
議長(自民)を除く自民・公明の51人全員(自民36人 + 公明16人 – 自民議長1人)が反対したためだ。
この事実だけを聞けば、カジノ反対決議に反対したのだから、自民・公明の横浜市議全員はカジノ賛成だと解釈できる。しかし、彼らの当日の主張は違った。
明確に「カジノ賛成」とは言わず、「
市長は白紙と言ってるのに、ここで反対決議をあげるのは時期尚早である」という主張に終始した。つまり、
カジノに賛成なのか反対なのか隠したまま、カジノ反対決議を潰した。
そこで本記事では、カジノ・IRが議題に初めてあがった2012年までさかのぼって
横浜市議会の議事録を確認し、カジノ賛成を明言した横浜市議は誰で、どのような発言だったのかを明らかにする。その中でも、議会で最も注目を浴びる林市長に対する質問中の発言に限定して見ていく。
市長にカジノ・IRについて議会で質問した横浜市議の推移
まず、結論から言えば、市議会での林市長への質問中、カジノおよびIRに賛成と判断できる内容を発言したのは、
ほぼ全員が自民党の横浜市議*である。
<*自民党以外で賛成したのはみんなの党・平野和之 市議1名のみ>
そして、自民党の市議たちの質問は、その時期にも大きな特徴がある。
グラフ1・林市長にカジノ・IRについて質問をした横浜市議の質問件数推移
自民党*と自民党以外の件数
*質問当時は自民党ではないが、現在は自民党に所属する市議も「自民党」に含めてカウント
*カウントは人数ではなく件数。例えば、1人の議員が同じ年に2回質問した場合は、2件とする
グラフ1は、林市長にカジノ・IRの質問をした人数を
自民(赤線)と
自民以外(青線)に分けて、年ごとの推移を折れ線グラフで表している。
自民は全員がカジノに賛成の立場、
自民以外は1人(みんなの党・平野和之 市議)の例外を除いて全員がカジノに反対の立場で質問している。
つまり、
赤線はカジノに賛成の立場の質問、
青線はカジノに反対の立場の質問と捉えることもできる。なお、質問当時は自民党ではないが、現在は自民党に所属する市議も「自民党」に含めてカウントしている。また、カウントは人数ではなく件数。例えば、1人の議員が同じ年に2回質問した場合は、2件としている。
この折れ線グラフで注目したい時期が2箇所ある。
1箇所目は
2012年~2013年。自民以外はまだ質問すらしてない中、
最初にカジノ・IRについて質問し始めたのは自民党である。(2012年:1件、2013年:1件)
2箇所目は
2017年~2018年。カジノに反対する市民の声が高まり、
自民党以外の市議はカジノ反対の立場で積極的に質問する(2017年:9件、2018年:11件)中、
自民党市議はカジノ・IRについてほとんど質問しなくなる(2017年:1件、2018年:1件)
グラフ1のエビデンスとして、質問の年月日、会議名、質問者、所属政党を表1に示す。(赤字は自民党)
表1:林市長にカジノ・IRについて質問をした横浜市議リスト
余談ではあるが、自民党以外(黒字)の市議に着目すると、
立憲・太田正孝市議(8件)、無所属・井上さくら市議(7件)、共産・古谷靖彦市議(5件)らが2014年という早い段階から何度も
カジノ反対の立場で林市長に質問を重ねていたことが読み取れる。