また軽減税率に加えて、キャッシュレス決済に限って価格の2~5%をポイント還元する制度も導入される。還元分を国が負担し、その対象となるのはクレジットカード、交通系ICカード、電子マネー、QRコード決済など。消費増税後の景気の落ち込みを防ぐ特例のため、今年10月から来年6月までの期間限定となる。
実際のポイント還元の方法としては、
「支払い額の2~5%がポイントとして付与される」、「購入したその場で2~5%分が値引きされた額を支払う」という、2つの方法が想定されている。
クレジットカード大手6社(JCB、三井住友カード、ユーシーカード、クレディセゾン、イオンフィナンシャルサービス、三菱UFJニコスのMUFGカード)は、還元分のポイント相当額を請求段階で差し引く方針だ。楽天カードなどは、政府が原則とするポイント付与で対応するという。
またクレジットカードには、共通の「上限枠」を設けられることになるという。その上限は還元額1万5000円で、仮にすべての決済を還元率5%の中小店で行ったとしても、カード利用額としては月30万円が上限。
これはカード1枚当たりの上限で、何枚もカードを持つ人は還元額が大きくなる。
つまりカードを複数枚持っているなら「枚数×30万円」までポイント還元の恩恵を受けられる。上限枠はクレジットカード以外のキャッシュレス決済手段にも設定される。現時点では未定な部分も多いが、電子マネーについては1日のチャージ上限額が1日の還元上限額となるというのが有力だ。
キャッシュレス決済のポイント還元制度が、複雑さに拍車をかける
そして消費者にとって分かりにくいのは、
すべての店で行うキャッシュレス決済が対象になるわけではないということだ。
東京都世田谷区の税理士K氏は
「対象となるのは中小企業に限定され、大企業は対象外。さらに中小企業でも全事業者が対象というわけではなく、自主的に登録した事業者に限られています」と説明する。ポイント還元を受けたければ、どの店がポイント還元に参加しているのかを消費者側が見極めなければならないということになる。
さらに、そのポイント還元率についても「5%」と「2%」という複数の還元率がある。この点もさらに実態を複雑にしている。
「フランチャイズ店舗に関しては2%、そうでない中小事業者の店舗については5%という2種類の還元率を使い分けることになります。同じコンビニチェーンであっても、本部直営店などは大企業扱いでポイント還元が適用されません。
同じチェーン店舗であっても2%の還元が受けられる店と受けられない店があるという点も注意してください」(K税理士)
これまで見てきたことを総計すると、軽減税率と2種類のポイント還元率の組み合わせによって、税率3~10%に分かれることになる。まさに10月から「ややこしすぎる」消費税率が始動することになるのだ。
<文/藤池周正(ライター)>