我が家の風呂場は、余計なものがなくてスッキリ
「シャンプーひとつごときで大げさな……」と思われるかもしれない。しかし、大量生産・大量消費・大量廃棄が、異常気象をはじめとして人間社会を蝕んでいることは説明せずとも分かるだろう。
一方で同時に、格差拡大が進み、貧困化する人々が増して、シャンプーを買うのに困る人もいる。カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した『万引き家族』(是枝裕和監督)では、少年がシャンプーを盗む場面がある。家族たちが洗髪はお湯で大丈夫と知っていたら、シャンプーをケチったり万引きしたりする必要があっただろうか。
「消費を増やせ!」と経済成長を目指せば、幸福度や満足度が上り坂、という時代はとうの昔に終わった。その幻想を追いかけて、未だにできもしない経済成長を目指すから、気候も環境も、幸せも暮らしも下り坂になる。もうそろそろ右肩上がりではなく、幸せを目指そう。
政治家も産業界もジャーナリストも「消費を増やし、環境も改善しよう」というが、そんな方程式は、未だ誰も確立できていない。いつか方程式が解けるまで待つのか。待っている間に人類はひどいことになりはしないか。
もう正直に認めよう。「消費を減らして、環境を改善しよう」と。それなら誰でもわかる当然の方程式だ。だが、これだけ言うと「でも、人間の欲望は抑えきれない」という人がいる。
ではさらに言おう。
「消費を減らし、幸せを目指そう」
シャンプー消費を減らしたほうが、買い物選びの時間も減らし、出費も減らし、働く時間も減らし、ゴミも減らせる。その見返りとして、髪の質と健康が増し、自分の時間が増え、家の中がスッキリするのだ。
【たまTSUKI物語 第19回】
30歳で脱サラ。国内国外をさすらったのち、池袋の片隅で1人営むOrganic Bar
「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称:たまTSUKI) を週4営業、世間からは「退職者量産Bar」と呼ばれる。休みの日には千葉県匝瑳市で NPO
「SOSA PROJECT」を創設して米作りや移住斡旋など地域おこしに取り組む。Barはオリンピックを前に15年目に「卒」業。現在は匝瑳市から「ナリワイ」「半農半X」「脱会社・脱消費・脱東京」「脱・経済成長」をテーマに活動する。(株)Re代表、関東学院経済学部非常勤講師、著書に
『次の時代を先に生きる』『減速して自由に生きる』(ともにちくま文庫)など。