いかがわしさとは無縁なはずの世田谷区に増える裏風俗
撮影/取材班
世田谷ブランドが輝きを失っているのは不動産市場だけではない。いかがわしさとは無縁なはずの同区に今、裏風俗が侵食してきているというのだ。風俗情報メディアの編集者は話す。
「東京五輪を控え、ここ数年は山手線沿線の違法風俗への締め付けが厳しくなっていますが、そこから逃れた本番アリのエステや無許可デリヘルなどが、千歳烏山に店や待機所を構えるようになった」
さらに世田谷区出身の元半グレメンバーのM氏によると、犯罪集団も流入してきているという。
「二子玉川周辺には、振り込め詐欺集団の拠点が少なくとも2つある。二子玉川ライズ(複合施設)ばかりが目立っていますが、駅から少し離れれば人通りも少なくて犯罪者にとっては都合がいい。少し前には闇金の拠点もあった」
犯罪集団の流入の影響か、ネット上には二子玉川の治安が悪化したという証言も少なくない。ちなみに’18年の警視庁の統計によれば、世田谷区での犯罪発生件数は6035件で新宿区に次いで23区中2位となっている。
7月には区内にある「ひかりの輪」施設に公安調査庁が立ち入り検査を行ったばかり 写真/AFP=時事
風俗業者や犯罪集団が流入する一方、世田谷区から他区へ“亡命”する者も。今春、港区に引っ越したばかりの30代の主婦は言う。
「引っ越しの理由は、息子の小学校の学級崩壊です。息子が通っていたのは、世田谷区内でも名門といわれていた区立M小学校ですが、授業が成り立たないほど荒れていた。世田谷区内で越境通学させようとも思い、O小やS小、K小なども考えて情報を集めましたが、どこも問題児がいたり、モンスターペアレントがいたりと環境が良くなかった。区内では5、6年前からいわゆる『公立小移民』の子供たちが増え、質が低下したともいわれています」
ブランドが崩壊しつつある世田谷区に、さらに追い打ちをかけるのが税収の大幅な減少だ。世田谷区の保坂展人区長は6月、ふるさと納税による今年度の区民税減収額が約53億円に上るとの見通しを明らかにした。
区民税減収額の推移 ※保坂区長の過去の談話を基に作成
昨年、急遽発足したという世田谷区ふるさと納税対策担当課は「区民にふるさと納税の再考を促す配布物を作成するなど、対策を行っています」と頭を悩ませる。そんななか、世田谷区の財政を今後圧迫しそうなのが老人介護費用だ。東京23区研究所所長の池田利道氏はこう指摘する。
ふるさと納税で税収減に悩んでいる世田谷区 撮影/取材班
「世田谷区は、要介護3以上の認定者の割合が23区で2位。一方で、同区は入所型高齢者福祉施設の定員充足率(高齢者数に対する施設定員数の割合)が22位、特別養護老人ホームの定員充足率も23区で最低レベルに甘んじています。また、高齢者の正社員就業率はワースト2位です」
池田氏が作成した「東京23区の医療充実度ランキング」によると、世田谷区の病床の集積密度や面積あたりの病院数はそれぞれワースト5位・3位と低い。高齢者福祉が遅れ、医療レベルも低いとなれば、独居老人の孤独死リスクも当然高くなると予測できる。
没落していく世田谷ブランド。セレブなイメージは過去のものになるのかもしれない。