れいわ新選組と山本太郎氏論・ポピュリズムとリアリズムの狭間で

れいわ新選組は「左派」なのか

 共産党の試算では、財政を様々な場所から捻出し、17.5兆を確保することになっているが、これは主に社会保障の財源確保などに使われることになっている。(参照:日本共産党の政策│日本共産党中央委員会)  消費税は平成29年度では年間17兆円の税収だ。廃止のための財源確保は、共産党並みの徹底した課税強化を行ってようやく捻出できる額だ。  しかし、冷静に考えてみよう。年間17兆の財源があれば、社会保障の強化や再分配機能の強化は可能である。  このような政策ではなくあえて消費税廃止を目指す理由は何か。 「消費税ではなく法人税や所得税の累進性を強化するべき」という意見は一見正しく思える。  しかし、それは必ずしも消費税が不要な税であるということを意味しない。間接税が、広く様々な国で用いられている税率であることも確かだ。  所得税の累進性強化、法人税の課税強化は必要であるとしても、消費税を廃止したり減税したりするべきだ、という結論にはならない。  そもそも、日本の国民負担率は中程度、社会保障は極めて低く、更に社会保障の持続性には大きな疑念を持たれている。  OECDのレポートなどを見ても、再分配機能は先進国の中で極めて弱い。 ”明確な定義があるわけではございませんけれども、今厚労省から御答弁があった国際比較という意味でいえば、社会保障支出の対GDP比は、OECD諸国、データがある中で、三十五カ国中十五番目、やや真ん中ぐらい、それから国民負担率という意味でいうと、OECD三十六カ国中二十六位ということで、下から数えた方が早いという状況にございます。  また、社会保障給付費、急速な高齢化を背景として増大していく中で、予算という意味で申し上げれば、その給付費の約半分弱を公費負担で賄っておりますけれども、それを賄うための十分な財源を確保できておらず、赤字国債の累積という形で後代にツケ回しを行っている状態にございます。  こうしたことを考えると、我が国は中福祉・低負担の状態にあるというふうに考えておりまして、委員御指摘のように、社会保障の持続性を確保していくための不断の改革が必要というふうに財政当局としては考えているところでございます。”(令和元年4月17日 衆議院法務委員会 宇波政府参考人)  このような中、年間20兆程度必要な消費税廃止が本当の意味で国民の幸福に資するかは、十分に考える必要があるのではないか。  そもそも、消費増税賛成派は決して少なくはない。消費増税は関心の高いテーマではあるが、国民が最も苦しんでいるのは消費増税ではなく、上がらない賃金や年金生活への不安ではないか。(参照:読売新聞)  このような点を踏まえても、れいわ新選組を左派的政党、あるいは左派的ムーブメントと評価することは難しい。

特定枠と選挙運動のあり方

 今回、れいわ新選組は舩後靖彦氏、木村英子氏、二人の重度障碍者の候補を特定枠で擁立し、二人ともが比例枠で当選した。(参照:朝日新聞)  まず断っておきたいのは、二名の重度障碍者が参議院議員に当選されたことは日本の議会にとって素晴らしいことであり、参議院や、当然衆議院を含め議会は全面的にサポートするべきだ、というのが私のスタンスである。  その上で、申し上げたいことがある。  障碍者支援は、立派なテーマであり、選挙で問うべき大きなイシューだ。しかし、今回の選挙でその争点がどの程度語られていただろうか。  政見放送では、語られていた。控えめに言っても、非常に良い政見放送だったと思う。  しかし、今回の選挙、そしてれいわ新選組にとっての一丁目一番地は、消費減税だったことは明らかだろう。  WEBサイトを見ても。政策の一番上には消費税廃止が踊っていた。  自らが落選しても(おそらく落選するであろうことは理解していたはずだ)、お二人を国会に送り込みたいとした山本氏の姿勢は、評価したい。  しかし、ならばなぜ消費減税が政策の一番上に来るのだろう。  そこにもまた、政策と選挙の優先順位のねじれを、どうしようもなく感じてしまう。  そもそも私は、社会保障機能の強化こそが、重度障碍者の方々にとっても行きやすい社会になると信じている。それは、税を嫌うことではなく、再分配や社会保障という税の機能を十分に活用することでしか実現できないはずだ。  だからこそ、消費税廃止と今回の特定枠の擁立に、一貫性を感じることができない。  れいわ新選組は一体どのような政党で、何を実現しようとしているのか、やはりその点が見えないからこそ、政策と選挙のねじれを感じるのだろう。
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山本太郎氏の「議会活動」に対する姿勢
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