ここが変だよ、日本の消費税<新連載・佐藤治彦の[エコノスコープ]令和経済透視鏡>

外国人への「消費税還付」も日本は特異

 最後にもはや爆買いしてくれない外国人観光客に対しての消費税還付も日本は特異だ。海外を旅行して付加価値税などの還付の経験したことがある人は多いと思うが、諸外国でも外国人旅行者に消費税やそれに準ずるものが戻ってくることはある。しかし、これは高額な商品を買ってもらうのが主な目的だ。そして、空港などで未開封の商品をみせ手続きをして初めて税金が戻ってくる。それもヨーロッパなどでは手数料がかかるので、15~20%ほどの日本の消費税にあたるものに対する還付も半分程度の10%くらいということが多い。  ところが、日本の場合は何でもかんでも全額還付する。例えば海外ではあり得ない食品や消耗品の多くも免税の対象となっているのだ。  つまり、10月からは日本の多くの店舗で国の制度で観光客だけ10%の割引セールをするようなものなのだ。  徴税は公平性と納得性がとても重要とされる。消費税を税の基幹据えるのであれば、とても重要だ。特に消費税が10パーセントになるということは、12ヶ月ある1年のうち、1か月分は自分のためには使えない。消費税として納税するために働くことになる。  年末には5万円、6万円といったおせち料理が発売されるだろう。それも軽減税率の対象になるはずだ。中には使い捨てにするには勿体無い高級なお重に入ったものもある。お重だけ別に買えば10%、おせち料理の器として手に入れれば8%なのである。軽減税率はそうした変テコな状況を生む。私は食料品に対する軽減税率よりも、むしろ、水道料金、ガス代、電気代、通信費、電車やバスなどの公共料金こそ、軽減税率の対象にしても良かったのではないかと思う。特に地方の人にとっては生活に欠かせないガソリンには今までも二重課税が問題視されてきたが、10月からはがっちり消費税が増税されるのだ。  毎日、少しでも安く買い物をしようとやり繰りする主婦たちのため息が聞こえるようだ。 新連載:佐藤治彦の[エコノスコープ]令和経済透視鏡
さとうはるひこ●経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『年収300万~700万円 普通の人がケチらず貯まるお金の話』(扶桑社新書)、『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』 (扶桑社文庫・扶桑社新書)、『しあわせとお金の距離について』(晶文社)『お金が増える不思議なお金の話ーケチらないで暮らすと、なぜか豊かになる20のこと』(方丈社)『日経新聞を「早読み」する技術』 (PHPビジネス新書)『使い捨て店長』(洋泉社新書)
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