ここが変だよ、日本の消費税<新連載・佐藤治彦の[エコノスコープ]令和経済透視鏡>

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イラスト/いらすとや

明確な勝者のいなかった参議院選挙

 第25回参議院選挙が終わった。  与党は過半数を得た勝利であったが、自民党単独では参議院で過半数を割ってしまった。また、安倍首相が悲願とする憲法改正に関しても、自民、公明、維新を合わせたいわゆる改憲勢力は、発議に必要な参議院での2/3に僅かに足りない状況になった。与党の中での公明党の役割が大きくなったことは明らかだ。自民党案の憲法9条改正には消極的な公明党だけでなく、安倍一強の政治状況の中では目立たないが自民党の中にもハト派はいるので選挙前よりも改正に関して状況が厳しくなったことは間違いないだろう。  対する野党は1人区で統一候補を立て、6年前は2勝しかできなかった与党の現職だらけの厚い壁を10勝まで伸ばしたものの、一方で複数区では相変わらず、野党同士の潰し合いが続いた。特に静岡と東京、関西の選挙区ではそれが目立ったように思う。 こうした野党への国民の失望感は続いている。それを一番象徴したのが比例区だ。2017年の総選挙と比べて一番得票を減らしたのは立憲民主党だ。希望の党からの分裂騒ぎで巻き起こった枝野フィーバーは完全に終わった。それもあってか選挙中には多くのメディアが立憲民主党の20議席台の獲得を予想していたが、結果はそれを下回る17議席に留まった。  投票率が49%弱と史上最低レベルで、これを政治評論家は深刻な政治離れと切り捨ててしまうが、私は多くの人が与党にも野党にも選択肢を見出せない新・無党派層というか絶望層が相応の数になってきたのではないかと思う。

「絶望」層にアピールした新たな動き

 今回の選挙ではそういう絶望層にアピールした新たな動きも見られた。特筆されるのが山本太郎を代表とするれいわ新選組だ。4月に旗揚げしたばかりで選挙期間中は各メディアはほとんど取り上げなかったため、選挙運動は非常に不利のはずなのだが、SNSなどで山本太郎氏の演説などが拡散されたためだろう。比例区で220万を超える得票を得て2議席を確保、政党要件を獲得した。私もネットで見たのだが、山本太郎氏の演説には強烈なカリスマ性があり、選挙区では野党候補の応援演説も引き受けた。山本が応援演説に入ると伝えられると集まる聴衆の数が増える。まるで、自民党の小泉進次郎効果のようなのだ。  また、主に個人ばかりの献金で4億円もの寄付があったことにも驚いた。演説会場では山本太郎氏の話を聞いた聴衆が500円、1000円という寄付をするために長蛇の列を作った。  その主張の最大のものは「消費税ゼロ」である。平成と共に日本でも導入された消費税は、法人税や高額所得者の所得税の減税分の穴埋めにしかなっていないではないか。これでは社会保障の財源のための消費税とは言えないというのがその主張だ。  その論についての評価は別の機会にするとして、消費税について思ってることを少し話したい。
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高級賃貸マンションには優しいけどマイホーム族には冷たい消費税制度
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