ここが変だよ、日本の消費税<新連載・佐藤治彦の[エコノスコープ]令和経済透視鏡>

究極の軽減税率はすでにある。

 ご存知のように令和元年10月から消費税は10パーセントに引き上げられる。また、新たに軽減税率が導入されることが話題だ。食料品などは税率8パーセントのままに据え置かれるのだ。外食などもテイクアウトは軽減税率となるため各社対応に追われている。  しかし、究極の軽減税率は消費税が始まった時から実はある。  家賃だ。もう少し詳しくいうと居住用の賃貸住宅には消費税はかからない。ゼロなのである。究極の軽減税率だ。  賃貸住宅の消費税がゼロということは都会の高級賃貸住宅のように、毎月の家賃が50万どころか100万円を越すものも、無税なのである。  高級マンションの中には居住者用のジムが併設されているマンションがある。家賃にジム使用料が含まれているならば税金はかからない。  一方で事業向けの賃貸物件には税金がかかる。例えば、月の家賃が10万円程度の小規模事業者向けの賃貸物件にも消費税はかかるのだ。  個人向けの居住でも、ウィークリーマンションやリゾートマンションには消費税がかかる。もちろん、ホテルや旅館に定住している場合でも税金がかかる。1泊2000円の安宿には税金がかかり、月額100万円を超えるジム付き賃貸マンションは無税なのである。  駐車場の扱いも不思議だ。個人が自家用の車のために駐車場を借りると消費税がかかる。ところが、タウンハウスや高級マンションのように駐車場料金が家賃に含まれている場合はそれも無税となる。  つまり、毎月の家賃が100万円を超える高級ジムと駐車場付きマンションは消費税ゼロなのである。  これに比べてマイホーム族には冷たい。個人がマイホームを持とうとすると、建物には消費税がしっかりかかる。10月からは10%かかる。30年以上の住宅ローンを払い、不動産取引税と毎月の固定資産税なども払う上に、建築費用には消費税がかかるのだ。  持ち家派が不当に扱われるというか、高級マンションが無税なのはどうしても納得がいかない。

消費税の「理不尽」は医薬品でも

 医療費をめぐる消費税の扱いでも変テコなことがある。微熱や咳が出て気分が悪い。それでも、サラリーマンなどは余程のことがないと会社を休んで医療機関には行きずらいものだ。さらに非正規など時給ベースで働く人は仕事を休めば収入に直結するから深刻だ。そのため多少のことなら、自分でドラッグストアに行き、薬剤師などに症状を話し薬を買うことも多い。  今は風邪薬だけでなくいろんな薬が街のドラッグストアで買えるようになって便利になった。しかし、こうした薬にはしっかり消費税がかかる。  しかし、同じ薬であっても、医療機関で出してもらった処方箋に基づく薬には税金はかからない。それどころか、個人の判断でドラッグストアで購入する薬と違って医療費の一部となるので、多くの場合は保険点数に基づくいわゆる薬の価格は3割負担にしかならない。つまり、処方箋による薬は保険と消費税の両方で負担を軽くしてもらってるわけだ。  国は増え続ける医療費の削減に必死なはずだ。それなのに、個人が医療機関を受けないで病気を治そうとする行為には税金や社会保険の恩恵はない。また、病気にならないように、もしくは早期発見しようと出向く人間ドックにはもちろん消費税がかかるのだ。
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外国人観光客への「なんでもかんでも免税」もガラパゴス!?
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