「背景にあるのは日本の機関投資家と企業です。人口減少の進む日本の市場は縮小傾向にあります。生き残るには海外へ打って出ざるを得ない。そのため海外企業をM&Aする動きが活発化している。海外企業を買えば、買収資金の支払いにより円を外貨に交換するフローが発生します。海外企業の買収は円安要因なんです」
武田薬品がアイルランドの製薬大手に投じたのは約7兆円。為替市場を動かすには十分すぎる金額だ。
「もうひとつは金融政策の影響。マイナス金利によって機関投資家は“外モノ”、つまり海外の金融市場へ投資せざるを得なくなっています。円で預かった資産を海外市場へ投じるため、これも円安要因。とくに最近ではGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)系への投資が活発化しています。海外企業のM&Aと外モノ投資の2つが円高の進行を阻止してきたのです」
海外投資の増大が米ドル/円を下支えしているのだ。
長期的には「令和の円安」も想定されるものの、今は警戒が必要な時期だと西原氏は指摘する。
「短期的にはむしろ円高を警戒しています。米中貿易戦争が長期化しているためです。トランプ大統領は妥協する姿勢を見せていないため、夏場に向けて交渉の難航により株価急落・円高急進となる場面もあるでしょう。ただ、それはトランプさんにとっては、むしろ望ましい展開かもしれません」
ポイントは来年に控えた米大統領選挙と米国株市場だ。
「トランプさんは株価を非常に気にしています。彼ほど株価を気にしている大統領もいないでしょう。再選を目指すトランプさんとしては大統領選が佳境となる来年前半は株高に誘導し、実績をアピールしたいはずです」
<NYダウは10年以上も上昇しているが……>
月足チャートを見ればNYダウは一貫して上昇トレンドにあることがわかるものの、’18年10月3日につけた史上最高値2万6828ドル近辺でトリプルトップを形成して反落を示唆している 図版/ウエイド
ところがNYダウのチャートの形は崩れてきている。
「パッと見てわかるとおり、トリプルトップを形成しています。10年間続いた上昇トレンドが、トップアウトした可能性が高まっています」