軽量鉄骨住宅は火事になっても鉄骨が燃え残って原形をとどめると思っている人が多いが、それは大きな誤解だ。
鉄骨は火災の熱で「変形」する可能性が高い。データによると、火災時の温度は、700~ 950℃まで上昇する。
それに対して、鉄は550℃を超えると柔らかくなって変形してしまう。鉄は木材に比べて熱の伝わるスピードが早いため、火災で急激に上昇した温度によって、鉄骨の原形を保つことができなくなる。鉄骨が曲がれば屋根などを支えきれなくなり、倒壊事故につながるおそれがあるのだ。
一方の木材はというと、1986年に東京営林局東京木材サービスセンターで木造住宅の燃焼実験が行われたが、それによると、実験用の木造住宅には12&15センチメートルの角材が使用され、窓のサッシも木製だった。実験の結果、着火後55分を経過しても2階への延焼はなかった。
また別の実験では、木材が燃える速度は1分間に0.6~0.8ミリメートル程度で、着火後30分が経過しても表面の18ミリメートルが燃えただけで、柱や梁などの構造材にいたっては強度の半分以上が残ったというデータもある。
この実験からもわかるように、ある程度の太さがある木材は、いったん燃えて表面に炭化層ができるが、その炭化層が酸素を遮断することでさらに燃え進むのを防ぐため、簡単には燃え尽きないのだ。
「軽量鉄骨という建材は、負の特性が大きいんです。大手ハウスメーカーのコマーシャルで『鉄骨構造』であることを積極的に広告しているところがないということが、何よりの証拠です」(岩山氏)
【岩山健一(いわやま・けんいち)】
一級建築士。1956年8月27日生まれ。1999年に日本建築検査研究所を創業。これまでに3000を超える建築検査にかかわり、欠陥住宅裁判の鑑定人としても活躍している。ニュース番組や新聞、週刊誌など、メディアに多数出演。近著に
『たしかな家づくり——マイホーム建築の基礎知識』(若葉文庫)
<文/藤池周正(ライター) 写真/岩山健一>