熱中症の発生は、住宅内がいちばん多い。断熱性能の低い軽量鉄骨住宅に潜む危険性

住宅内での熱中症発生は全体の41%

熱中症 梅雨が明け、いよいよ暑い夏がやってくる。都市部では、真夏になるとヒートアイランド現象が起こり、最高気温は沖縄より高くなる。しかも気温が高いうえに湿気も高いので、非常に厳しい環境で生活を余儀なくされる。  特に心配されるのが熱中症だ。梅雨明けから猛暑が続く8月15日ぐらいまでの間が最も熱中症が起こりやすいとされており、注意が必要だ。熱中症は屋外の暑さによって起こりやすいと思われるかもしれないが、実は住宅内での発生も軽視できない
熱中症円グラフ (2)

熱中症の発生は、住宅内がいちばん多い

 厚生労働省の資料によると、2010年度に東京都内で発生した熱中症のうち、住宅内は全体の41%に上っている。家の中で室温が高くなったり、通気性が低く湿度が高くなったりして体に熱がこもりやすくなることで、熱中症を引き起こすことになる。 「夜は涼しくなるから問題ないだろう」と、エアコンを止めたり窓を閉めたりしたまま寝るのも避けたほうがいい。夜も室内の温度や湿度は下がらず、睡眠中は体内の水分が発汗によって失われ、寝ている間に熱中症になってしまうこともあるのだ。

岩山氏「量産される軽量鉄骨住宅は最も危険な住環境」

小屋裏収納の天井部分

軽量鉄骨住宅の、小屋裏収納の天井部分。鉄がむき出しになっていることがよくわかる

 新刊『たしかな家づくり』(若葉文庫)を上梓した日本建築検査研究所の岩山健一氏(一級建築士)は、「熱中症対策という意味でも大手ハウスメーカーが量産する軽量鉄骨住宅は最も危険な住環境になっています」と断言する。  せっかく家を建てるのなら、夏涼しく、冬暖かい、常に新鮮な空気を取り入れながら誰もが快適に暮らしたいはずだが、「大手ハウスメーカーの住宅は『快適』『エコ』とはほど遠い中身になっています」(岩山氏)というのだ。  軽量鉄骨とはどのような建物を指すのだろうか。鉄骨造は、①鋼材の厚みが6ミリメートル以上の重量鉄骨造、②鋼材の厚みが6ミリメートル以下の軽量鉄骨造 ―― に大別される。鉄骨造の建築例と言えば、東京スカイツリーなどの超高層建築物や劇場、スタジアムなどの大型施設を思い浮かべるかもしれないが、それらは重量鉄骨造になる。  大手ハウスメーカーが一般住宅向けに開発・採用しているのは、重量鉄骨よりも薄い軽量鉄骨造だ。これらはすべて型式適合認定制度を利用して工場で製造された各パーツを現場で組み立てるため、別名「プレハブ工法」と呼ばれている。
1階部分

1階部分

 岩山氏は軽量鉄骨住宅について「システムそのものに問題がある」と語る。 「軽量鉄骨住宅は、室内側に断熱材と鉄骨の素地が見える納まりになっています。断熱材が全面に覆われておらず、中途半端に途切れています。鉄が熱を奪うのに断熱材で覆われていないというのは、まったく物理的な現象を考えずに計画しているということです」  断熱はあくまで連続していることが前提でなければ、効果は薄らいでしまう。室内側に鉄骨の素地が見える納まりになっていることで夏の灼熱を鉄が伝え、それが空調効率を著しく低下させてしまう。つまり、外気の暑さが鉄の柱を通して内部に伝わってしまうのだ。外気の温度の影響や日射や風の影響まで受け、人体にとって都合の悪い方へ温度が変化していく。
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鉄は木材より700倍熱を伝えやすい
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