フリーランスを排除、権力の広報と化し「大本営発表」を続ける記者クラブ

判決要旨の配布も「便宜供与」という権力側の主張

総務省記者クラブ

記者クラブは、フリーランスの取材に対して非常に排他的だ(寺澤有氏撮影動画より)

 なぜ、国側とマスコミが結託してフリーを排除するのか。寺澤氏は「日本では憲法が保障する『報道の自由』は絵に描いた餅で、判例上は『役所から記者クラブへの便宜供与』と解されているからでしょう」と語る。  寺澤氏はこれまでも防衛省だけではなく、警察庁や内閣府、総務省などに対してフリーランスの会見参加を求めてきている。東京地裁は2006年1月25日の判決で記者クラブ記者への傍聴席の確保や判決要旨の配布が「便宜供与」であるとの見解を示している。寺澤氏が警察庁長官の会見への参加を求めた際も「便宜供与」と主張された。 「つまり判決要旨の交付も記者席の用意も、記者会見の開催も、憲法や法律で定められた義務ではない。してもしなくてもいい『便宜供与』ということで、媒体を選別するのも自由ということなんですよ」(寺澤氏)
記者会⾒参加禁⽌もありうる

「フリーランスは記者会⾒で動画撮影禁⽌」という理不尽なルールを押しつけてきた総務省記者クラブに対し、フリーランス側は改正を要求。しかしいっこうに⾒直す気配がないので、⼀部フリーランスが動画撮影を敢⾏したところ、記者クラブ側は「記者会⾒参加禁⽌もありうる」と通知してきた

総務省記者クラブ臨時総会

⼀部フリーランスによる動画撮影敢⾏の事態を受けて、総務省記者クラブでは臨時の総会を開くこととなった。あわせて、「記者会⾒に参加することは認めるが、質問することは認めない」と記者クラブ側が⼀⽅的に指定する「オブザーバー」なるものについても議論されるという。フリーランス側は「オブザーバー」の撤廃を要求している

記者クラブの存在自体が「便宜供与」だ

 そもそも記者クラブの存在自体が「便宜供与」だとも言える。 「国や自治体の施設を無料であてがってもらい、資料やデータも全部もらえる。今や記者クラブがなければ、新聞社やテレビ局は自社の施設だけではオフィスを確保しきれないのです。日本の記者クラブのようなものは先進国にはどこにもありません」(同)
消費者庁記者クラブ

庁舎内に設置された記者クラブは、新聞社やテレビ局など特定のマスコミ企業のみが利⽤できる無料のオフィスとなっている( 画像は⼭王パークタワー時代の消費者庁記者クラブ)

総務省記者クラブ

総務省記者クラブの机の配置図。広⼤なスペースが特定のマスコミ企業へ無償提供されていることがわかる。原資は税⾦だ

 省庁や警察が記者クラブメディア関係者に特別な計らいをするのは、メディア関係者が権力側にとって都合の良い存在だからだろう。 「以前、私が民放の番組で警察の不正について語ったところ、警察からではなく、同局の警察担当者から番組担当者へ抗議が来ました。警察と暴力団の癒着を週刊誌で書こうとしていたら、警察が編集部に『もっといいネタがあるから寺澤の記事を載せるのをやめろ』と言ってきました。その雑誌は警察側の要求を受けつけなかったのですが、メディアに都合の悪い報道をさせないようにする警察側の常套手段なのでしょう。  記者クラブがある限り、日本のメディアが権力に都合の悪い真実を伝えることはありません。記者クラブのルーツが、戦中の政府によるメディア統制であったように、記者クラブは権力の『広報』として、大本営報道を続けるのです」(同)  メディアに対する読者の信頼が大きく揺らいでいる昨今、メディア側の自浄能力が問われている。 【寺澤 有氏】 フリージャーナリスト。警察や検察、裁判所、弁護士会、防衛省、記者クラブ、大企業など組織の腐敗を追及し続ける。『裁判所が考える「報道の自由」』『記者クラブとは』(ともにインシデンツ)など、著書多数
次のページ 
国連でも日本の「報道の自由」への懸念が報告
1
2
3