ミーガン・ラピノーが立ち向かう社会。大統領やプロ野球選手からも飛んでくる心無い批判とそれに抗う「力」

みんながよりよい社会への責任を負っている

「これで(スピーチを)終わろうと思う。私たちはもっとよくならなければいけない。もっと愛しあって、憎しみあうことを減らさなきゃ。もっと(相手を)聞いて、(自分が)話すことを減らさなきゃ。これはみんなの責任だって理解しなきゃいけない。ここにいるすべての人の。ここにいないすべての人の。ここに来たくないすべての人の。すべての賛成する人、反対する人の。この世界をよりよい場所にするのは私たちの責任です。  このチームはそれを(責任を)背負うことについて、大きな仕事をやってのけていると思う。世界で私たちに与えられた立ち位置も理解している。ええ、私たちはスポーツをプレーしてる。ええ、私たちはサッカーをプレーしてる。ええ、私たちは女性アスリート。私たちはそれ以上の存在だと思う。  あなたたちもそれ以上の存在。あなたたちはファン以上の存在。あなたたちは単にスポーツをサポートする以上の存在。あなたたちは4年に一度観るだけじゃなくて、毎日そのスポーツを観てる。あなたたちは毎日コミュニティで活動してる。どうやってコミュニティや周りにいる人をよりよくできる? 家族や近しい友人。一番身近にいる10人、20人の人々。一番身近な100人の人々。すべての人の責任です」

自分も加害者の一人だった

「ここ数年、あまりにも争いが多すぎた。私はその犠牲者だったし、加害者でもあった。協会に言ったいくつかのことについては申し訳なく思ってる。いくつかについては後悔してないけどね。全部(後悔しているわけ)じゃないよ。  でも、今は団結するときで、この対話は次のステップに進んでる。私たちは協力しなきゃいけない。それにはみんなが必要。これは私からみんなへの指示です。やれることをやって。やらなきゃいけないことをやって。自分の中から飛び出して。いま以上の存在、もっといい人間になって。これまでの自分より大きくなって。  このチームは、あなたたちがそうすることでなれるものの例です。これを模範にして。とんでもないことだと思う。私たちは今日ここに来て、あなたたちと祝うため、多くのものを背負った。私たちはそれを笑顔でやった。だから、私たちのために同じことをして。お願いします。ニューヨークシティ、あなたたちがマザー・ファッキン一番だよ!」  最後には放送禁止用語も飛び出したラピノーのスピーチ。彼女のメッセージは、女子アスリート、性的マイノリティ、そしていち市民として、“身分をわきまえていない”過激なものだろうか? それとも、スポーツを通して、社会、そして世の中全体を前進させるものだろうか? 筆者は後者であると感じた。  前出のサファテやマシソンのように、政府や社会への意見に対して「嫌なら出ていけ」という言葉を浴びせる人は少なくない。実際、アメリカではラピノーが載ったポスターが破られるといった事案も発生しているという。  しかし、本稿で紹介したラピノーのコメントをみればわかるとおり、彼女は誰かを打ち倒そうとしたり、除外しようとしているわけではない。それとは正反対に、自分を含め、多くの人がお互いに対してより寛容であり、成長するべきであると述べている。  W杯では逆風にもめげず、見事優勝を飾ったラピノー。ピッチ外で発生した“延長戦”でも勝利できるのか、その戦いを追い続けたい。 <取材・文・訳/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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