ミーガン・ラピノーが立ち向かう社会。大統領やプロ野球選手からも飛んでくる心無い批判とそれに抗う「力」

トランプ大統領は人々を排除している

 そして、もうひとつ注目を浴びたラピノーの発言が、「(W杯で優勝しても)ホワイトハウスには行かないし、私が話したチームメイトのみんなも行くつもりはない」というものだ。  こうしたラピノーの姿勢に対して、日本のプロ野球チーム・福岡ソフトバンクホークスでプレーするデニス・サファテは「ようラピノー、そんなにアメリカが嫌いなら出ていけよ! 誰も止めないから」と投稿。同じく日本でプレーする読売ジャイアンツのスコット・マシソン投手が「賛成だね。ほかがどうなってるか見てみればいい」と返信している。  ラピノーは自身が同性愛者であることをカミングアウトしており、たびたびLGBTQを支援するメッセージを発信している。性的マイノリティに対して否定的なトランプ大統領に招待されても、ホワイトハウスには行かないというのは、決して驚くような発言ではない。その真意について、ラピノーはCNNのインタビューで次のように答えている。 ――このインタビューを大統領が観ている、観る可能性は高いでしょう。大統領へのメッセージはありますか? ラピノー:「大統領へのメッセージね。あなたのメッセージは人々を排除してる。私を排除しているし、私のような見た目の人を排除してる。有色人種の人を排除してる。あなたを支持しているかもしれないアメリカ人を排除してる。  私たちはあなたが打ち出すメッセージや『メイク・アメリカ・グレート・アゲイン』について言っていることに立ち向かわなきゃいけない。あなたはある人たちにとっては「グレート」じゃない時代に戻ろうとしてる。一部の人たちにとってはグレートなのかもしれないけど、この世界にいるすべてのアメリカ人にとって十分なほどグレートじゃない。  私たちみんなに責任があるし、あなたにはとても大きな責任がある。この国の首長として、すべての人をケアして、みんなのためにもっといい仕事をしなきゃいけない」

マイノリティにとっては「グレート」ではない

――「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」というのが、‘40年代、‘50年代を指すのだとしたら、ゲイであることで投獄されたり、家族によって精神病院に送られることもあるかもしれません。通りで愛する人と手を繋いで歩くこともダンスすることも、何もできませんよね。  異なる人が(「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」を)私的な視線で見るのは興味深いですね。あなたがおっしゃったように、過去に権利のなかった人々の立場になってアメリカを見られていないのかもしれません。 ラピノー:「そうですね。多くの人にとって(昔のアメリカは)グレートな場所ではありませんでした。とても抑圧的な場所でした。世界で一番酷いところだったとは言いませんし、多くの人が目指した場所でした。誰もアメリカから出ていきたいとは言わなかったでしょう。  ただ、世界の素晴らしい国のひとつとして……そう私たちを見ていきたいです。(アメリカの)内面をしっかり見続けて、自分たちが向上できるように挑戦していきたいですし、私たちの周りにいるみんながより向上できると思っています」 ――アレサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)やナンシー・ペロシ(米下院議長)……。ナンシー・ペロシは「超党派や議会にあなたを歓迎する」と言っていましたが、ワシントンに行くことは考えていますか? ラピノー:「ええ、もちろん。チームメイトと会話をしても、みんなワシントンに行くことに興味を持っています。私たちにとって特別な瞬間です。この運動に影響を与えたり、私たちが話したいことについて話し合ったり、私たちの国の指導者たちと祝福するのは素晴らしい瞬間です。  なので、AOCにもイエスだし、ナンシー・ペロシにもイエスだし、超党派にもイエスだし、議会にもイエスだし、チャック・シューマー(民主党の上院院内総務)にもイエスだし、そのほかにも私たちを招待して掘り下げた話をしたい人、私たちが信じていることを同じく信じている人にイエスです」
次のページ 
優勝記念式典で放送禁止用語を絶叫
1
2
3
4