ミーガン・ラピノーが立ち向かう社会。大統領やプロ野球選手からも飛んでくる心無い批判とそれに抗う「力」

サッカー女子アメリカ代表の多様性

 トランプ大統領が回帰しようとしているアメリカは、性的マイノリティや有色人種にとっては、「グレート」どころか抑圧的な国。一部の人間を排除した「グレート」を追求するのではなく、国民全員にとってよりよい国を目指してほしい……。ラピノーの主張は大統領に噛みついた「過激発言」ではなく、至極まっとうなものだ。  また、ニューヨークで行われたW杯優勝式典では、次のようなスピーチをしている。以下はその全文訳だ。(参照:CBS NEWS) 「マイク入ってるね。いこう、ニューヨークシティ! みんな見えるよ。遠くにいる人も。後ろの人もこんにちは! これは狂ってる。完全にイかれてる。言葉を失う。いや、ちゃんと見つけるけどね。心配しないで。これは馬鹿げてるよ。  まず始めに大切なことは、チームメイトのみんなに声をあげて。みんなに拍手を。この集団はとても活気があって、タフでユーモアに満ちてて、めっちゃワルだよ。この集団を言い表すことはできない。(私たちは)リラックスして、紅茶をすすって、祝福する。ピンクの髪もいれば、紫の髪もいる。タトゥーが入ってたり、ドレッドもいる。白人の女の子も、黒人の女の子もいる。その間の全部も。  ストレートのコも、ゲイのコもいる。カーリー、アレックスと一緒にこのチームのキャプテンを務められて、これ以上ないぐらい誇らしい。このチームをフィールドに率いてくことはとても名誉。ここ以外に行きたいところなんてない。大統領選でさえね。私、忙しいから、ゴメンね」  発言内容と影響力の強さから出馬を期待する声が出ているラピノーだが、政治家転身についてはジョークを交えながら否定した。

ブーイングを受けた会長を擁護

「コーチングスタッフ、技術スタッフ、医療スタッフ、サポートスタッフ、マッサージセラピスト、映像班、シェフ、セキュリティ、メディア班、私たちの仕事を楽にしてくれてありがとう。フィールドでやらなければいけないこと以外、何も考えなくてよかった。ありがとう。(アメリカサッカー)連盟のカルロス(・コルデイロ会長)も。あなたはこの大会では素晴らしかった。この壇上にいるとちょっと硬いね(会長が壇上にあがったとき、「イコール・ペイ!」という声とブーイングが起きた)。でも、権力のある人は誰でもブーイングされるものだから。  もう少しカルロスを推しておくよ。私たちの側にいて、物事を正しく動かしてる。彼(の手腕)は証明されてる。私たちのために(連盟の)事務局に入ってから毎日ね。彼は私たちとともにいる。W杯のすべての日でもそうだった。私たちにとって重要である人間的な部分だけじゃなくて、どの試合でも(選手が入場する)通路にいたし、祝福してくれた。感謝してる。ありがとう。これからも彼に圧力をかけてきたいね。  市長の事務所も、私たちを迎えてくれてありがとう。知事も。クオモ、発音あってるよね? 迎え入れてくれてありがとう。それとニューヨーク市警、消防局、これを実現させてくれたすべての人に。ありがとう。みんながいなきゃ実現は不可能だった。世界一大きな大都会を封鎖するのを手伝ってくれたみんな、最高のチームを家に迎え入れてくれてありがとう。私たちにとってとても意義深いことです」  男女格差の是正など、積極的に意見を発信しているラピノーだが、矢面に立たされたサッカー連盟の会長に対しては労いの言葉を贈っている。
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憎しみあうより、愛しあうべき
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