2度の豪雨でたやすく崩落した伊方発電所周辺集落の避難路。蓮池氏とへこみデミオ号で回ってみた

行くな酷道をゆく「へこみデミオ」

国道197号線旧国道分岐

国道197号線旧国道分岐2019年6月10日ドライブレコーダによる
右手に旧国道197号線(伊方町道)が分岐している 標高110m

 神崎口バス停付近にある旧197号線伊方町道に入り、大久(おおく)地区まで旧道を通ることにしました。ここは、2016年6月の梅雨前線停滞による豪雨で道路崩壊が起こり、伊方3号炉再稼働時には全面通行止めで復旧時期未定でした。
2016年6月の梅雨前線停滞による豪雨で通行止めとなった旧国道197号線同地点

2016年6月の梅雨前線停滞による豪雨で通行止めとなった旧国道197号線同地点2016/08/13牧田撮影
復旧には1年近くを要している

 この伊方町道は「行くな(197)酷道」と呼ばれていた旧国道197号線ですが、道路規格は昭和30年代の国道にしてもかなり低いものの、北岸の県道255号線未改修区間に比べるとかなりましといえます。そのため隣接する集落間の移動経路としてはよく使われており、伊方町役場のある湊浦から大久までの間の生活道路と言えます。そのためこの道路が壊れると、隣接する集落間の移動がわざわざ山頂道路を迂回することになるため、長期の閉塞はたいへんに困ります。  この旧道に入ると、右側に宇和海の絶景が広がります。宇和海は太平洋の景色となり、発電所側の瀬戸内海の風景と大きく変わります。佐田岬半島は、太平洋の景色と瀬戸内海の景色が両方とも楽しめ、魚も両方のものがとれます。
旧国道197号線

旧国道197号線2019年6月10日ドライブレコーダによる
離合点は随所にあるが、昭和30年代の国道としては規格がたいへんに低い。右手に宇和海の絶景が見える。右遠方が大久地区 標高90m

 観光資源としてはかなりの潜在力があり、八幡浜・大洲道路*が全通すれば、佐田岬半島にもかなり来やすくなりますので、早期の完成が望まれます。 <*国道197号 「大洲・八幡浜自動車道」全線の早期完成を目指す – 八幡浜市  この景色の差には蓮池さんも大喜びで、また宇和海側には砂浜があることに気がつかれました。佐田岬半島は、宇和海側には砂浜が広がっており、昔から海水浴場があちこちにあります。八幡浜の住人は、昔は連絡船で海水浴に来ていました。
旧国道197号線(伊方町道)2

旧国道197号線(伊方町道)2019年6月10日ドライブレコーダによる
中央の右曲線は2016年8月の時点では道路崩壊によって全面通行止めとなっていた。右のガードレールと擁壁は、災害復旧工事で新しくなっている

旧国道197号線(伊方町道)3

旧国道197号線(伊方町道)2019年6月10日ドライブレコーダによる
大久港と砂浜が見える。佐田岬半島の南側(宇和海側)には、砂浜が多く、海水浴場がある

 この旧道で標高差110mを下ると大久集落に入ります。この集落は比較的大きく、小中学校の統廃合が進む中、小学校が無事に残っています。しかし、さすがは「行くな酷道」だけあって、道路は狭隘で、離合はできません。  過去のドライブレコーダ映像を何本も点検しましたが、この旧国道は、北岸の県道よりはよく整備されているとは言え、集落内は軒先をかすめるように通行し、離合ができず、集落外では恐ろしい道がのこるなど、例えば夜間に何かがあれば数十メートル下に転落と言うことも起こりえます。地元民が「行くな(197)酷道」と恐れただけのことはあります。それだけに山頂道路が全通した後も、1985年に航路廃止されるまで民間の八幡浜・三崎間連絡船が半島南岸の主要な集落を結んでいたのです*。各集落の港湾施設がずいぶん立派であることの背景と言えるでしょう。 <*宇和海と生活文化(平成4年度)愛媛県生涯学習センター
旧国道197号線(伊方町道)大久地区三崎側入口

旧国道197号線(伊方町道)大久地区三崎側入口2019年6月10日ドライブレコーダによる
正面が旧国道である。たいへんに狭く、離合はできない。佐田岬半島は集落間の移動が船で行われていたために、各地区に港湾が整備されている。 標高3m

「車が使えない場合」に登る急峻な坂

 本当は、この旧国道(伊方町道)を湊浦まで戻りたいのですが、もう暗くなりますので、この大久地区から山頂道路に戻ることしました。
旧国道197号線(伊方町道)大久地区交番前

旧国道197号線(伊方町道)大久地区交番前2019年6月10日ドライブレコーダによる
正面の山の頂上、風力発電所の後ろに国道197号線(山頂道路)がある。車が使えない場合は、標高215mまで歩かねばならない。標高10m

 写真のように大久集落からは、大久農道によって山頂道路に行くことができます。大久地区の標高は約10mで山頂道路の標高は215mです。宇和海側の集落と山頂道路を結ぶ道は、瀬戸内側の集落のそれより格段に良いのですが、災害時に使えるのかは分かりません。  蓮池さん含め皆さん、「もし車が通れなくなったらこんな坂を登るの!?」と絶句です。原子炉が壊れるような災害時に、このような険しい道路や、無理をして敷設した道路が健在である保証はありません。  予備経路がない場合、道路が壊れたときに妥当なのは海路からの脱出でしょう。この場合、津波を想定せねばなりません。
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伊方発電所再稼働時における災害の記録
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