緊急避妊薬のオンライン診療、9割超が賛成。必要な理由は「コンドームの失敗」

WHOは「医学的管理下に置く必要はない」としている

 国際的基準を鑑みても、WHOは、緊急避妊薬を「思春期を含むすべての女性が安全に使用できる薬」とし、「医学的管理下に置く必要はない」としている。また、国際産婦人科連合(FIGO)と「緊急避妊のための国際連合」(ICEC)の共同声明でも、「医師によるスクリーニングや評価は不要である」「薬局カウンターでの販売が可能である」としていて、必ずしも医師の受診は必要ないことを示している。  日本において、病院受診の義務が緊急避妊薬へのアクセスを大きく阻んでいる一方、受診したところでその利点も充分には活かされてはいない。また、国際的に見ても緊急避妊薬は医学的管理下に置く必要がないとされている中で、病院受診の義務化にこだわる必要は本当にあるのだろうか。  一方で、もちろん緊急避妊薬をきっかけに産婦人科やOCと繋がることは望ましいことではある。そこで、病院を受診すると最も安く手に入るといった策を講じれば、緊急避妊薬へのアクセスは守りながらも、受診を促す仕組みを構築できるのではないだろうか。薬局販売を許可している国の多くはこのような方法を取っている。

アクセス改善を求める世論は圧倒的

 調査では最後に、緊急避妊薬のオンライン診療、薬局販売についての賛否を問うた。すると、どちらも回答者が1500人を超える中、オンライン診療には92%が賛成、薬局販売には98%の人が賛成と答えた。緊急避妊薬へのアクセス改善を求める声はもはや明白と言えよう。  もちろんアクセス改善にあたっては、課題もある。緊急避妊薬はあくまで緊急の方法で、低用量ピル(経口避妊薬、OC)などに比べれば成功率は低い。緊急避妊薬へのハードルを下げるのであれば、それ以上に、OCなどへのアクセスも改善しなければならない。加えて、それらの適切な使用を促すための性教育、啓発も欠かせない。すべてのひとの安全、健康を守るためにも、それらが同時に進んでいってほしいと切に願っている。

妊娠への不安を抱える女性たち、中絶につながる恐れも

 今回、緊急避妊薬へのアクセスに障壁があると答えた人は96.3%。繰り返しになるが、アクセス改善を望む人も9割を超えた。その上、回答者1566人のうち、600人を超える方が自身の体験や思いを綴って下さり、文字数にしてなんと約10万字にのぼった。その多くは、アクセス改善を切望するものであった。全文は、調査結果とともに「#なんでないのプロジェクト」のサイトにあがっているので、是非ご覧頂きたい。  私がこのプロジェクトをはじめたきっかけのひとつも、スウェーデンに留学した際、薬局で1000円ちょっとで販売されていた緊急避妊薬の存在だった。  私は今手を伸ばせば緊急避妊薬が手に入る。でもこの瞬間にも日本では、高くて買えなかった、学校を休めず間に合わなかった、病院が遠くて行けなかったなどの理由で、不安な日々を過ごしている同世代が沢山いる。もしかするとそれによっていま中絶している子もいるかもしれない。そう思うと、悔しくて、悲しくて、仕方なかった。そんな思いを誰にもしてほしくないし、私もしたくない。  オンライン処方の可否はまもなく決まるそうだ。日本での中絶数を1日で換算すると全部で約450人、10代でも1日約40人が中絶している。今回調査に協力して下さったひとりひとりの思いが、国に、社会に、届いていくこと、そして私たちの次の世代ではこんな思いをせずに済むことを、私は心から切に、願っている。 <文/福田和子> 世界性科学会(WAS)Youth Initiative Committee委員 / I LADY.ACTIVIST / 性の健康医学財団 機関誌『性の健康』編集委員 / 国際基督教大学 大学入学後、日本の性産業の歴史を学ぶ。その中で、どのような法的枠組みであれば特に女性の健康、権利がどのような状況にあっても守られるのかということに関心を持ち、学びの軸を公共政策に転換。その後、スウェーデンに1年間留学。そこでの日々から日本では職業等に関わらず、誰もがセクシャルヘルスを守れない環境にいることに気付く。避妊法の選択肢や、性教育の不足を痛感し、「私たちにも、選択肢とか情報とか、あって当然じゃない?」 という思いから、2017年5月、『#なんでないのプロジェクト』をスタート。今秋からスウェーデンの大学院に進学予定。
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