今回、オンライン処方を解禁するかどうかに当たって、厚労省の検討会でも議論されている懸念の一つが、「(産婦人科を受診しなくなると)性被害への対応やOC(経口避妊薬)への移行が難しくなる」という点だ。
確かに、緊急避妊をきっかけに、低用量ピルなど日常的な避妊の実行に繋げることは大変重要である。また、性被害の場合、適切な対処によって加害者の特定に繋がることもある。では実際のところ、現状の仕組みの中でそれらはどこまで充分になされているのであろうか。
調査の結果、性被害への適切な対処があったと答えたのはたった1割にすぎなかった。むしろ、性的被害を打ち明けずにいたところ、「なんでこうなっちゃったの」「もう飲むようなことのないように」とあたかも被害者が悪かったかのような発言をされて傷ついたというケースも散見されるのが現状だ。
さらに、産婦人科を受診するからこそ緊急避妊からOCに繋げられているという意見もあるが、薬をもらう際、OCへの移行に関してなにもいわれなかった人は6割に上る。実際にピルへの継続的な移行を果たした人は2割に過ぎない。受診を義務化していても、必ずしもその利点が活かされているとは言い難いのだ。
他にも検討会では、様々な条件付けや論点が検討された。
例えば医療従事者の前で緊急避妊薬を服用する、いわゆる面前内服も今回条件としてあげられる見込みだ。しかし、現状として、面前内服はなかったと答える人が7割近くに上った。転売防止などの意図もあるが、転売のリスクはどの薬にも当てはまるうえ、転売は現状の法外な価格が原因とも考えられる。今後議論が進んでほしいところだ。
また、再診の促し方として同意書の存在も議論されていた。今回、内容に関わらずなんらかの同意書を求められたことがあるかについて尋ねたが、約半数の人がなかったと答えている。同意書には様々な形があり、もう性交渉をしないとサインさせられるケースもあるという。
検討会では服用から3週間後の産婦人科受診を義務づけるといった論点もあがった。その3週間という期間設定になんらかのエビデンスがあるのかは不明であるが、現状としては、検討会で上がっていた「3週間後に受診をする人は7~8割」という数字とは異なり、医師から3週間後の受診を勧められた人はわずか6.9%であり、実際に受診した人は6.2%であった。受診をした人の中には医師の勧めがなかった人もおり、3週間後を義務づける以上に、なにか不安があればいつでも受診できる環境づくりが重要なのではないだろうか。