Day2 12:00 講演当日 京郷新聞による取材
翌日、午前中は発表練習に費やし、お昼に後藤政志さん、通訳さんと合流しました。そのまま地下鉄乗り継ぎで会場近くまで移動しましたが、韓国は公共交通の運賃がたいへんに安いです。地下鉄車内には、ごちゃごちゃした吊り広告がなく、阪急電車よりもスッキリしています。表示も日本語対応ですし、たいへんに楽です。
後藤さんとは実は初対面です。穏やか且つ信念の方だと思います。3.11当日は都内で帰宅難民と化し、12日午前中に帰宅したとき、格納容器(CV)が耐圧の二倍まで達している様をTVで目の当たりにし、世界が変わったとのことでした。CV設計者の生の声は貴重です。
私は、3/11の17時半頃に全電源喪失、復旧の見込み無しと報じられたときに、原子炉の崩壊を覚悟しましたが、何より驚いたのは、専門家が明白な嘘をつきはじめ、しかも原子炉について無知、行政は市民を守ろうともせず、東電は当事者能力無し。これが私の価値観を激変させました。
後藤さんは、3/11後にカミングアウトし、言論活動を開始されたとのことでした。私はもっと前からと勘違いしていました。
民弁事務所ビル入り口で 後藤政志さんらと2019/05/24
当日は、ソウル市内32℃で真夏の暑さですが、日本と異なり蒸し暑さは軽い方です。それでもたいへんに暑く、外を歩くのは難儀でした。
京郷新聞(The Kyunghyang Shinmun)による取材があり、写真撮影ののち、昼食と喫茶店でのインタビューでした。
インタビューでは、ハンビッ原子力発電所における反応度重大インシデント*、次いで福島第一汚染水問題と質問が続きました。
<*参照:
“原発ハンビッ1号機の熱出力計算・判断ミスは危険極まりない「ヒューマンエラー」 : hankyoreh japan(ハンギョレ新聞日本語版)2011/5/22” >
これは制御棒過引抜という初歩的なヒューマン・エラーによる重大インシデントでしたが、インタビュー当時、このことは知られておらず、とにかく情報開示が第一であること、この重大インシデントで原子炉が壊れることは無いと思うが、反応度事故は原子炉事故では最も恐ろしいもので、合衆国を中心に散々研究し尽くされている。このような事故を起こしたことは、運用などのソフトウェア面を含めてシステムに重大な欠陥があることを示していると答えました。
最後に
日本人物理学者による5/21韓国原子力学会における講演についての質問となりました。これは全く知らなかったことで、質問途中で嫌な予感がしましたが、日本人発表者の名前は、
Ryugo Hayano氏であるということで、心底驚きました。そりゃあきませんわ。
私からは、
当該研究は、対象者全員からのデータ利用の承諾を受けていなかった、倫理委員会決定前に研究を開始してしまった事から不正研究である疑いがきわめて強く、研究そのものの存在が許されないことになっている。また、多くのガラスバッチの扱いが悪く、終日家屋に放置されていた物が多いために測定の体をなしていない。データ解析がずさんであり結論の意味が無い。それらを査読で見抜けなかった問題も大きい。などと言った理由で、現在東京大学で調査中である。故に、韓国原子力学会が早野氏を招聘したこと自体が学問的にはきわめて不誠実な誤りである。
勿論、早野氏には抗弁する機会と権利があるし、そもそもこのようなきわめて初歩的な研究不正を地位も名誉もある優れた学者の早野氏がおこなう動機が全く分からない、あり得ないことだとコメントしました。
加えて本件については、黒川眞一博士らによる一般向けの寄稿記事*を読むことが望ましいと伝えました。
<*参照:
“黒川名誉教授緊急寄稿。疑惑の被ばく線量論文著者、早野氏による「見解」の嘘と作為を正す | ハーバービジネスオンライン 黒川眞一 2019/02/11”
“疑惑の宮崎早野論文を報じた朝日新聞に看過できない「改ざん」。不誠実な「訂正」は許されない | ハーバービジネスオンライン 黒川眞一2019/02/21”>
また牧野淳一郎博士による批判も公開されている。
・
“データ不正提供疑惑・計算ミス発覚の個人被曝線量論文。早野教授は研究者として真摯な対応を | ハーバービジネスオンライン 牧野淳一郎2019/01/11”
・
“宮崎早野論文を、「削除はするが問題はない」とした放射線審議会の異常さ | ハーバービジネスオンライン 牧野淳一郎2019/02/04” >
そのほか、岩波書店の「科学」誌などで厳しく批判されているので、これらと早野氏の主張を共に見るべきだと答えました。
日韓間には密接且つ重層的な交流があります。言語による障壁こそありますが、日本語話者である韓国人はたいへんに多く、しかも日本人より日本語を巧みに操り、解する韓国人すらいます。日本での出来事、韓国での出来事は相互に筒抜けなのです。
インタビューは当初、英語で行われましたが、あいにく当方の応対能力が限られるので、同時通訳者に入ってもらい、韓日語での取材となりました。
そうです。我々のホスト側通訳者は恐ろしく、素晴らしく有能だったのです。私は「しまった〜」と後悔し始めていました。