見切り発車でイージスアショアの購入契約に突き進んだ日本政府
地上配備型ミサイル迎撃システム「イージスアショア」配備候補地の「陸上自衛隊むつみ演習場」
山口県と秋田県に配備予定の地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の購入契約を、防衛省が米国との間で結んだと報じられた4月26日。その10日前には山口県阿武町の有権者の約半数が、配備反対の意思表示をしていた。これを重く受け止めた花田憲彦町長が防衛省への申し入れを公言した矢先に、安倍政権は見切り発車で購入契約に突き進んだのだ。
そもそもイージス・アショアの必要性はあるのだろうか。現在の日本のミサイル防衛システムは海上の「イージス艦」と地上に配備した「PAC3」の2段階。まずイージス艦で迎撃を試みるが、撃ち漏らした場合には地上のPAC3で対処する。ここに急に割り込んで来たのが、イージス艦と同様のシステムを地上に配備するイージス・アショアなのだ。
軍事評論家は首を傾げている。「イージス艦は現在の4隻体制から8隻体制に倍増、ミサイル防衛システムの進化によりイージス艦2隻の稼働が1隻で済むようになった。イージス・アショアが過剰な装備なのは明らかだ」。
また、本サイト
連載中の牧田寛氏も、イージス・アショアの配備予定地は、日本防衛のためには明らかに不自然な位置にあり、その用途はハワイやグアムといったアメリカにとっての早期警戒・追跡レーダーとして使うためのものだとしか思えないと結論づけている。(参照:
「誰がためのイージス・アショアか?」配備地から導き出される、ある推論–hbol)
そして、イージス・アショア購入の閣議決定(2017年12月19日)に至るまでの経過を見ると、安倍政権が「米国益第一・日本国民二の次」であることは一目瞭然だ。
閣議決定前月の2017年11月の日米首脳会談で安倍首相は、トランプ大統領の失礼な冗談にまったく反論できずに「忠実な従属的助手の役割を演じている(Japanese leader Shinzo Abe plays the role of Trump’s loyal sidekick)」(ワシントンポスト)と酷評されたが、トランプ大統領の米国製兵器購入の要請にも「イージス艦の量、質を拡充していく上において、米国からさらに購入をしていくことになっていくだろう」と快諾していたのだ。
配備される山口県阿武町の住民からは「配備されたら出ていく」との声も
イージス・システムは強力な電波を発して弾道ミサイルを探知、迎撃ミサイルで撃ち落とすシステムだ。海上配備のイージス艦であれば、電磁波による健康被害も迎撃ミサイルから切り離される落下物のリスクもほとんど問題にならない。
しかし地上配備のイージス・アショアの場合は近隣住民の生命や安全に深刻な悪影響を及ぼす恐れがある。阿武町民の間から「配備を事前に知っていたら移住することはなかった」「もし配備されたら出て行く」といった声が噴出するのは当然のことなのだ。
しかも日本海に面する人口約3400人の阿武町は、「選ばれる町」をキャッチフレーズに移住者増加に取り組み、人口減少(社会減)に歯止めをかけた優良自治体だ。安倍政権は最重要課題と位置づける「地方創生」のお手本になるような過疎の町に対して、冷徹非情な仕打ちをしようとしているのだ。