ラブホテルの外観は立地するラブホ街によって傾向が異なる!?<ラブホテルの地理学>

 この二つの写真をご覧いただきたい。左は、側面にギリシャ風の列柱をあしらい、屋上にネオンを掲げた巨大なラブホテル。一方、右は一見普通のマンションと見まがうようなシンプルな外観をしているが、これもまたラブホテルである。
大阪市内のラブホテル

大阪市内のラブホテル。双方の雰囲気は大きく異なる

 これらのラブホテルは、いずれも大阪市内に存在する。左はOsaka Metro谷町九丁目駅に近い生玉町と呼ばれるエリアに、右は京阪京橋駅の駅前にある。これらのエリアは、どちらもラブホテルが集積している「ラブホ街」なのだが、最初に挙げた2つのラブホテルが示す通り、両ラブホ街の雰囲気はかなり異なる。  大阪市内には《谷町九丁目》や《京橋》をはじめとして、いくつかの「ラブホ街」が存在する。そしてそれらは、多種多様な性格を持つ。 これから「ラブホテルの地理学」と題し、「大阪」という大都市を彩るラブホ街の個性を、「マジメな視点」で複数回に分けてさまざまな観点から解き明かしていく。  第一回となる今回は「総論編」と題して、大阪市に存在する多くのラブホ街を分類し、それぞれの「類型」を示していきたい。

「ラブホ街」を分類する

 ラブホ街は、その規模や立地から分類すると分かりやすい。次の表は、都市工学の観点から盛り場を研究する大矢正樹氏が2009年に示した「ラブホ街の分類」である。 大矢氏は、ラブホ街はその立地によって「都市型」と「郊外型」に分けることができ、またさまざまな「規模」のラブホ街が存在するとしている。こうした「立地」と「規模」による分類を用いた見方は、読者の経験的な理解とも一致するのではないだろうか。 分類 一方で、この分類では都市に存在するラブホ街の個性を十分に捉えきれていないという問題がある。  そこで今回は「規模」と「立地」に加え、「部屋数」と「駐車場」という観点から大阪市内を事例に「ラブホ街の特徴」について詳細に分析してみる。

ラブホ街は「乗換駅の周辺」に生まれる

 現在、大阪市には200軒ほどのラブホテルが存在する。次の図はその分布を示したものである。大阪には「ミナミ」と「キタ」という二つの大きな繁華街があるが、ラブホテルは、それらを中心として旧市街を取り囲むように分布している。
分布

大阪市におけるラブホテルの分布

 この分布図をよく見ると、とくに「私鉄のターミナル駅・乗換駅」周辺に多くのラブホテルが存在していることが分かる。  「キタ」の中心である梅田駅(阪急)、「ミナミ」の中心である難波駅(南海)はもちろんのこと、阪急電鉄の宝塚線・神戸線・京都線が交わる十三駅や、京阪本線とJR環状線、Osaka Metro長堀鶴見緑地線などが乗り入れる京橋駅、そして近鉄大阪線のターミナル駅である大阪上本町駅周辺にも多くのラブホテルが存在する。そこで、今回は「駅」を単位としてラブホ街を分類する。  最寄駅を基準としてラブホテルをまとめると、次の図のようになる。  どの程度の軒数以上をラブホテル街とするかは議論があるだろうが、今回は一つの最寄駅圏に3軒以上が集まるものを「ラブホ街」として扱った。
規模

大阪市におけるラブホ街の規模

 一部知名度の低い地名もあるが、大阪に暮らす人であれば納得のいくような場所が多く並んでいることに気付くであろう。  先述の通り、ラブホ街は「繁華街」や「私鉄乗換駅」の周辺に多いが、《谷町九丁目》や《桜ノ宮》など、中心駅からは少し離れた場所にある事例も見られる。  唯一市域の端にある《八尾南》は、阪和自動車道松原インターチェンジの近くにある郊外型ラブホ街になる。地方に住む人にとっては、こうしたインターチェンジ近くの郊外型ラブホ街も見慣れたものであろうが、大阪市近郊ではそれよりも「駅前立地」のほうがはるかに優勢だ。  もちろん、東京都心においても、ラブホ街は渋谷や新宿、池袋、上野など「私鉄乗換駅」の周辺に形成されていることが多い。知らない大都市でラブホテルに行きたい際には、こういった街と雰囲気が近い「乗換駅」の周辺を探してみると良いだろう。
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巨大ラブホが生まれる特定条件とは?
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