「保険金が支払われない!?」海外旅行保険の治療費請求で気をつけるべきこと

保険請求で困ったらADRセンターと金融庁に通報を

 追って調べてもらうと、その担当と上司のところで情報が止まっていて、役員・部長などから探りを入れてもらっても途中で話が立ち消えになっていることがわかった。 「このまま事態が動かないようだったら、そんぽADRセンター金融庁に通報した方がいい」というアドバイスを受けたため、1週間待ったうえでアドバイスに従ってその両方に連絡した。  どちらも直接トラブルの解決を請け負うものではなく、あくまで保険会社と被保険者の当事者間での解決を仲介するだけだ。しかし、これらの機関に不正なトラブルを把握されたことが保険会社の社内でバレると「大変なことになる」(前述知人)という。  そこで、「あなたから通報があった事実を保険会社にお伝えしてもよろしいですか?」と尋ねられた際、「お願いします」と答えた。すると、事態は一気に動き出す。  通報から2日目の朝、「ADRセンターへのご連絡ありがとうございました。確認の結果、保険金をお支払いすることになりました」というメールが保険会社から送られてきた。しかも、担当の名前が変わっている。ADRセンターや金融庁からの連絡に慌てて動いたとしか思えない、突如の早業だった。  もはや完全に信用ならないので、「いつ、誰が、何を根拠に何を疑い、いつ、誰が病院に問い合わせ、いつ、誰がその回答をもらい、いつ、誰がそれを逐次決済したのか」と返す刀で担当に質問した。その返事を見てまた驚くことになる。  保険会社から既往症を疑われた筆者は、状況を詳しく説明するため、30年前の腱鞘炎について医者に話したことも前担当に伝えていたのだが、新担当からの返事は「足立様から既往症のお話を聞き、加えて既往症があると診断書に書かれ……」というものだった。話の順序が逆になっていたのだ。しかも、重要なファクターである「いつ」「誰が」「誰の責任で(決済したのか)」などには一切答えていない。

ネット保険より信頼できる代理店を探そう

そんぽADRセンター

そんぽADRセンターのウェブサイト。保険請求でトラブルが発生したら、まずここに相談したい

 これが、筆者に実際に起きたことのあらましである。Medical historyの欄に通院時の症状を書いた医師のミスを差っ引いても、保険会社の瑕疵は大きい。本来なら、遅延損害金を請求してもいいくらいのケースだ。だが、これ以上追求してもリソースの無駄なので、この時点でアクションをやめた。  筆者はたまたま内部事情に通じた知人がおり、調査を含めてサポートしてもらったので助かった。さもなければ、保険金はおりなかったかもしれない。  ちなみに筆者がこれまで愛用し、今回トラブルになったのは、損保ジャパン日本興亜の「海外旅行OFF」という商品だ。ネット上で簡単に契約でき、しかも契約内容のカスタマイズも自在なので、いつも重宝していた。  前述の筆者知人は、こういったトラブルを避けるための苦情処理システム構築に関わっていた。それでも起こるこういったトラブルの背景について、「会社の合併によって社内がおかしくなった」と語る。せっかく構築した苦情処理システムも、内部の人が苦情を握りつぶすような組織風土が変わらなければ、残念ながら何の役にも立たない。  これに懲りた筆者は、次回からは保険会社を変えるつもりでいる。保険や金融業界の合併はどこでもやっていることであり、他がいいと一概には言えない。とりあえず、少し余分な手間とお金をかけてでも、ネット契約ではなく、信頼できる代理店に頼むことで、いくらかトラブルは回避できるだろう。  保険請求でトラブルになった場合の連絡先は以下の通り。 ・そんぽADRセンター TEL 0570-022-808 ・金融庁 金融サービス利用者相談室 TEL 0570-016811(IP電話からは03-5251-6811) <文・写真/足立力也> コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める。
コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める。
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