海外への出発で混雑する成田空港北ウイング。空港でも海外旅行保険に加入できる
10連休で海外に出かけた方も多いだろう。海外旅行に行く際、もっとも忘れてならないのは、命を守る海外旅行保険。旅行中に何らかのトラブルが発生し、これから支払いを申請する方もいるはずだ。
筆者自身、昨年末のコスタリカ取材で実際に病院にかかる事態に陥り、帰国後に保険金支払いの申請をした。ところが多くのトラブルが発生し、支払いを受けるのにかなり苦労した。保険金がスムーズに支払われない方のために、その時の経験から得た教訓を記しておきたい。
旅行出発前に「キャッシュレス決済可能な病院」を探しておく
2018年11月30日。軍隊廃止70周年記念式典を翌日に控えた朝、左腕にしびれを感じる。寝ていた時に体の下敷きになったのかと勘ぐりつつも、年嵩の知人たちがよく「腕や足がしびれたと思ったら脳梗塞だった」などと言っていた話を思い出し、スマホで症状を検索しながら朝食をとった。
1時間半後、変わらないしびれに不安が募る。指の動き方など、ネット情報を参考にすると、脳梗塞の疑いは晴れない。そこで急遽午前の予定をキャンセルし、ホテルからもっとも近い私立の総合病院に向かった。コスタリカの公立病院はとかく待たされるし、こちらは急いでいたからだ。
受付で症状を知らせると同時に、損保会社のサポートデスクに電話してもらい、状況を説明しつつ、後払いで保険金が支払われるかどうか確認。この場合は大丈夫だということで、安心して受診した。
受診前に病院とサポートデスクをつないでおくことは、後々の申請時に審査になった場合の証拠になるので、必ずやったほうがいい。ただしこの場合、それ以前にある“準備”をしていなかったことが、帰国後のトラブルのもとになった。
それは「キャッシュレスで診療してもらえる病院を旅行前にあらかじめ頭に入れておくこと」である。キャッシュレス対応の病院にかかっていれば、後述のようなトラブルに巻き込まれることもなかったからだ。
筆者がコスタリカで駆け込んだビブリカ病院(同病院ウェブサイトより)。発症時最も近くにあった私立総合病院だったので駆け込んだのだが、キャッシュレス対応病院をあらかじめチェックしておくべきだった
診断の結果は「エコノミー症候群、脱水などの疑い」。念のために血液検査をして、頭部CTも撮ったが、まったく問題はなかった。点滴だけ受けてあとは旅行を続けてよし、ただし帰国したら左腕を神経内科などで診てもらうように、とアドバイスをいただいた。
その後滞りなく取材は終了。帰国後に保険会社に請求の連絡を入れ、病院の領収書と診断書を郵送した。ところが、保険会社から来た連絡は「既往症があるようなので審査します」というものだった。
筆者はこれまで、脳や血管関係の疾患にはかかったことがない。もちろん、コスタリカの病院でもそのような話はしていない。強いて言えば、しびれを感じた左腕は、30年ほど前に腱鞘炎を患ったことがあると伝えた程度だ。
あらためて診断書を見てみると、”Medical history”(既往症)という項目に、「感覚異常、脱水、頭痛」と書いてある。これは病院にかかった時に筆者が訴えた症状だ。
また、診断書には当時の症状を書く欄がなかった。ましてや脱水が既往症などということはあり得ない。担当医が、Medical historyの欄に当時の症状を書いたことは、内容から明らかだった。
そこで、「その欄に書いてあるのは当時の症状で、実際それが書かれているところは他にないはず。いったい何の既往症を疑っているのか」と保険会社に質問した。
ところが、それに対する回答は一切なく、「現地の病院に問い合わせるから、これから送る同意書にサインをするように」という一方的な指示が返ってきた。典型的な“塩対応”である。