2017年時点で、パーム油の総発電容量は原発4.6基分
問題なのは、H.I.S.1社だけではない。経産省・資源エネルギー庁へFIT登録されているパーム油発電の総発電容量は、2017年時点で460万kW、つまり原発4.6基分に達した。これらの発電施設を稼働させるには、世界の燃料用パーム油の年間生産量の約半分という膨大な量のパーム油が必要となる。
その後申請を取り下げる企業も出てきたため、現時点でのパーム油発電のFIT登録は、178万kWへと減少した。それでもなお膨大な量のパーム油が必要であり、日本のバイオマス業界団体は、燃料用パーム油確保のためRSPO認証のパーム油だけでなく、インドネシアやマレーシア政府の環境基準によるパーム油の使用を認めるよう求めている。
しかし、これらの環境基準は「森林破壊の歯止めになっていない」と環境NGOなどから批判を受けている。
パーム油発電はFITの対象として高値で買い取られている
FoE Japanほか、複数の環境NGOによるパーム油反対署名も始まった。画像は署名サイトより
環境に悪いと知りながら、なぜ日本企業はパーム油を使ったバイオマス発電を行おうとしているのか。それはバイオマス発電による電気は、再生可能エネルギーとしてFIT(固定価格買取制度)によって電力会社に高値で買い取られるため、安定して利益を出しやすいからだろう。
だが、それは最終的には一般の消費者の負担となるのだ。NPO法人バイオマス産業社会ネットワークの泊みゆき理事長が指摘する。
「2018年度、電力料金に占めるFITのための賦課金は業務用で16%、家庭用で11%を占めています。本当に地球にやさしい電気のためならともかく、環境破壊や人権侵害につながるパーム油発電のために、私たちの電気料金から負担させられることには納得がいきません。パーム油発電はFITから除外されるべきです」(泊さん)
資源エネ庁の責任も大きい。早くからパーム油発電の問題を指摘し、資源エネ庁でのFITに関する有識者会議でも意見陳述した自然エネルギー財団の相川高信上級研究員は「バイオマスとして、パーム油による発電事業がFIT申請されることは、資源エネ庁にとっては想定外だったのでは」と語る。
「ですから、RSPO認証のパーム油に限るとしてハードルを上げたのでしょうが、そもそもパーム油発電をFITの対象としてしまったこと自体が間違いだと思います」(相川さん)