統一地方選で幸福実現党(幸福の科学)はなぜ19人も当選したのか?

「当選倍率1.3倍」と「投票者総数5万人」の壁

 次に各選挙の倍率を見てみる。当選者を出した18の選挙のうち、定数に対する候補者数の倍率1.0台(小数点以下2位を四捨五入、無投票除く)は5選挙あった。1.1倍台は6、1.2倍台は7、1.3倍台以上では全敗している。落選者も含めた全候補者について、倍率別の当落状況をまとめたのが、以下の表だ。
当選倍率別の幸福実現党当落状況

当選倍率別の幸福実現党当落状況

 倍率1.0台の勝率が最も高く、倍率が上がるにつれて下がっていく。当選倍率が比較的低い選挙でしか当選者を出せていないということだ。そして1.3倍台の手前に、強固な「壁」が立ちはだかっていることがわかる。  選挙の規模(投票者総数)との間にも、はっきりした関連性を見出すことができる。今回の統一地方選で、投票者総数5万人以上の選挙での幸福実現党の当選者は3人しかいない。試しにこの「5万人」を基準にしてみると、落選者も含めた同党の全候補者102人をおおむね半分に分けることができる(投票者総数5万人以上の選挙の立候補者52人、5万人未満の選挙では50人)。得票率を見てみると、5万人以上の選挙全体での幸福実現党の得票率は0.7%であるのに対して、逆に5万人未満の選挙では2.7%と3倍以上に跳ね上がる。  定数に対する当選者数の倍率は、5万人以上の選挙全体が1.2倍、5万人未満が1.3倍。偶然かもしれないが、前述の「1.3倍の壁」がここにも見える。  小規模選挙に強く大規模選挙に弱い。現に、統一地方選のうち前半戦の政令市議会選では全敗しており、後半戦も東京23区では全敗だ。  国政選挙で1勝もできず地方議員だけが増えていく同党の傾向を、今回の選挙結果が改めて示している。

当選者18人中13人が1000票未満

 当然、個々の当選者の得票数も決して多くはない。候補者102人中、1000票以上を獲得したのは17人だけだ。18人の当選者については、1000票を超えたのは5人しかいない。飛島村議選ではいとうゆたか氏が、たった155票で当選している。  最も多かったのは、津市議選の長谷川うえる氏(落選)の3,522票。最も少なかったのは比布町議会選の藤林しずこ氏(落選)の49票だった。1候補者あたりの平均得票数は、たったの637.6票。これを当選者のみに絞っても、1候補者あたり837.0票だ。  当選者を出した後半戦では人口が少ない自治体も多いため、幸福実現党単独で見るだけでは票数が少ないのかどうかわかりにくい。そこで小規模自治体の選挙でも「公認」を明示している公明党、共産党と比較してみよう。  幸福実現党が当選者を出した18の選挙で、公明・共産両党の候補者(落選者も含む)の票数より多かったか少なかったかで、幸福実現党の「勝敗」を集計した。結果は、対公明党が1勝31敗、対共産党が8勝25敗だ。  創価学会の足元にも及ばず、共産党よりはるかに弱い。  幸福実現党は決して「強かった」わけでも、他党に「勝った」わけでもないのだ。前述の当選倍率別の数値をグラフにした。
当選倍率別の幸福実現党当落状況グラフ

当選倍率別の幸福実現党当落状況グラフ

 候補者102人(無投票当選1人を除く)中、当選者は18人。「倍率1.3の壁」の手前ですら、多くは落選している。当選者は、グラフの赤丸でマークした部分だけだ。  候補者数が多く、候補者を立てた選挙の中に少数の得票でも当選に滑り込める選挙があった。それが、幸福実現党18人当選の実情だ。  投票率について見ると、幸福実現党が当選した各選挙では、前回と比べて軒並み低下している。もちろん、組織や人脈と無関係な人々も多く投票し投票率が上がれば、幸福実現党の勝算も減ると考えられる。しかし今回の選挙結果からは、投票率が何%以下になる当選者が出やすくなるかと行った類の傾向は見出すことができなかった。 投票率 落選はしたものの、最下位当選者の得票数に対して幸福実現党の落選者の得票数が80%を超えていたケースが6選挙あった。つまり、「危うく幸福実現党が当選しかねなかった」選挙だ。 ギリ危なかった選挙 洞爺湖町議選では約9票差、鹿島市議選で15票差、葉山町議選で21票差。次回の選挙で投票率や投票者数がちょっと変わっただけで幸福実現党の議員が誕生しかねない、「危ない町」だ。
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