余命3年、資金不足で土地を切り売り……しかしぶれない小澤社長の信念
小澤社長は今、病気が進行して1人での歩行はできない。車椅子か、または両脇を抱えてもらって移動する
小澤社長は自社のためだけに助成を訴えたのではない。全国には2017年度で1万8555社が協力雇用主として登録しているが、実際に出所者を雇用したのは4%強の774社に過ぎない。その背景には、助成が少ないことも一因だと小澤社長は捉えている。そして、山下大臣にこう言い切った。
「大臣、出所者がウチで働くと再犯率はゼロなんです。ウチには殺人未遂者も死体遺棄者もいるけど、働いたら全然問題ないんです。こういう会社があることを分かってほしいです」
山下大臣はゆっくりと頷き、こう約束した。
「今回いただいた話でできることについては、事務方で話し合いをします」
山下大臣は、2016年12月14日に施行された「再犯防止法」を議員立法で成立させた当事者だ。同法は、仕事や住居がない出所者のため、その職業や住居の確保、刑務所などでの職業訓練などの推進を謳ったもの。だからこそ小澤社長も期待するところなのだが、だからといってすぐに助成の予算が確定するわけではない。
今年2月上旬、小澤社長から筆者に以下のメールが入った。
「(出所者更生のための)予算が切れてきました。お金が厳しいので、豊浦町にある水の出る8000坪を350万円で、喜茂別町の3000坪を1000万円で売却中です」
余命3年。それでも、その行動はまったくぶれることがない。
<文・写真/樫田秀樹>