先述したように、マドゥロ大統領のツイートを自動的にリツイートするアプリまで登場しているおかげで、マドゥロ大統領は世界の著名人で3番目にリツイート率の高いアカウントとなっている。
同時に、政府関係者の発言に関するリツイートの速度は非常に早く、拡散にボットが使われているのは間違いないと考えられている。
しかし、ベネズエラのソーシャルメディア省は、「反対派が支持者はボットだと言って自分たちを慰めているだけ」と否定している。
ただ、その一方で政府を批判する側のリーダー(現在、拘禁中)のツイートも少なくとも7%が自動的にリツイートされている。
つまり
政権側と反政府側のどちらもボットを利用しているわけだ。とはいえ、圧倒的に政権側が有利なのは否めない。
ベネズエラのソーシャルメディアは政府によってコントロールされており、組織的に運用されている。たとえば通信省は
政府支持のツイッター軍団にツイート内容を指示するテキストメッセージを送っており、ハッシュタグは政府のメディア関係者はもちろんその他の部局のアカウントもツイートしている。
2018年7月19日に公開された”STATE-SPONSORED TROLLING”(INSTITUTE OF FUTURE、Carly Nyst、Nicholas Monaco)によるとベネズエラ政府は敵対する者たちをネットで激しく攻撃している(もちろん、リアルに拷問も行っている)。また政府関係者などにデジタル・ゲリラになるためのトレーニングも行っており、ツイッターやフェイスブックやインスタグラムを武器として戦うデジタル軍隊なのだという。
ベネズエラは国内でネット世論操作を行っているだけではない。2017年10月、スペインで行われたカタルーニャ独立に関する住民投票の際にロシアの干渉があったことはよく知られているが、実は
ベネズエラからの干渉も検知されていた。住民投票の後にスペインの外務大臣が記者会見で、
ネット世論操作に使われたアカウントの30%はベネズエラからだったことを明らかにしている( 参照:
”Spain sees Russian interference in Catalonia separatist vote”ロイター、2017年11月13日 )。
ネット世論操作において
ベネズエラとロシアは協調しており、ベネズエラがロシアに協力する一方でロシアは積極的にベネズエラを支援している。
アメリカのシンクタンク大西洋評議会のデジタル・フォレンジックラボによれば(参照:
”Same Script: RT and Maduro on Migration” 2018年11月18日)、ロシアがベネズエラの主張(強引に事実をねじ曲げたもの)の拡散に協力していることを指摘している。
ベネズエラから230万人が海外に脱出したことについて、国際的社会では同国の経済政策の失敗による経済悪化、治安悪化によるものと考えられているが、ベネズエラ政府はそれを否定している。
ロシアのプロパガンダ媒体として有名なRTのスペイン語版はベネズエラ政府の主張を拡散するために20の記事と動画を公開した。このサイトは1カ月3,900万訪問者があり、そのうち13.3%はベネズエラからだった。
またベネズエラはアメリカを中心とした西側の干渉についてさまざまな反論を繰り返している。たとえば、「海外脱出について西側のメディアは誇張しており他の国に比べて特段悪い状況ではなく、国連の公表している数字に疑問がある」、「アメリカやEUによる制裁措置がベネズエラの経済と人権の危機に拍車を掛けている」、「ベネズエラに対する不当な批判はアメリカからの干渉を正当化するためである」、「西側のメディアは公正中立ではなく、ベネズエラへの軍事的干渉を正当化しようとしている」などがある。