激動のベネズエラ。斜陽国家の独裁者を支持すべく、暗躍するネット世論操作の実態

ボットでネット世論操作を仕掛け合う

 日本ではほとんど報道されていないが、ベネズエラはネット世論操作においても有名である。  直近では2019年1月31日にツイッター社がベネズエラ国内のアカウントをネット世論操作の疑いがあるとして削除している(参照:Empowering further research of potential information operations )。  政権支援のアカウントが国内に対するネット世論操作に使われていたのと、海外への干渉に使われていたのだ。ワシントンポスト紙もこのことを“Twitter removed some accounts originating in Iran, Russia and Venezuela that targeted U.S. midterm election”と題した記事で取り上げていた。  削除されたアカウントは764で、ロシアのIRAが行っているネット世論操作を真似た活動を行っていたとされている。これらのアカウントの多くは2017年11月に作られており、自国の国内をターゲットにしたネット世論操作を中心に仕掛けていた。マドゥロ大統領のツイートを自動的にリツイートするアプリまで存在している。  フリーダムハウスの『インターネットの自由2013』によればベネズエラのインターネットは検閲されており、政府はSNSを利用して政権の見解を流布し、敵対する政党などを攻撃することに利用しようとしている。Twiplomacy調査(SNSの政治利用についてのレポート)によればマドゥロ大統領のRT比率は世界3番目の著名人となっている(これはリツイートされたツイートの比率の平均を尺度にしたもの)。  日本のBLOGOSで田中善一郎が紹介した記事もある(参照:「独裁大統領もソーシャルメディアをフル活用」、2011年7月30日)。  2018年7月20日に公開された世界のネット世論操作を一覧するレポート、“Challenging Truth and Trust: A Global Inventory of Organized Social Media Manipulation”(参照:Samantha Bradshaw & Philip N. Howard, Working Paper 2018.1. Oxford, UK: Project on Computational Propaganda. comprop.oii.ox.ac.uk. 26 pp.)には、ベネズエラは中規模の情報操作部隊を保有し、推定人数は500人である。選挙への干渉もあるとされている。  しかしこれらはベネズエラで行われているネット世論操作のほんの一部でしかない。同国のネット世論操作は2010年から始まっており、世界的に見てもかなり早い。2011年にツイッターを始めた当時のチャベス大統領(@ChavezCandanga)は400万番目のフォロワーに家をプレゼントすると約束し、実際に400万番目のフォロワーとなった大学生にプレゼントした。その後、特定のハッシュタグをプロパガンダに用いる作戦などが長年にわたって行ってきた。  2015年にはすでに同国のネット世論操作に関する論文も発表されている。 “Political Bots and the Manipulation of Public Opinion in Venezuela”(Michelle Forelle 南カリフォルニア大学アネンバーグ, Phil Howard ワシントン大学, Andrés Monroy-Hernández マイクロソフト・リサーチ ワシントン大学, Saiph Savage メキシコ国立自治大学)と題された論文によると、ベネズエラではボットの規模は小さいものの、政治シーンにおいて戦略的な役割を果たしているという。ラテンアメリカの政府や政治リーダーたちはデジタルメディアとデータを急速に活用するようになってきている。同国もそのひとつだ。  論文が書かれた時点ではベネズエラでのインターネット普及率は低く、ツイッター利用者も少なかった。しかし、インターネット利用者の14%がツイッターを利用しており、この比率は世界的に見ても高かった。  前述の大統領が世界第3位のRT比率だったことについて、この論文ではリツイートのほとんどはボットであろうとし、キューバの反政府活動家によってマドゥロ大統領のツイートをリツイートしていた2500アカウントがボットである可能性が高いことを指摘している。なお、この件に関しては専用アプリを使用していたと指摘するレポートもある(後述)。  この論文の調査結果によると、もっとも活動的なボットはベネズエラの革新的な野党のものだった。  ボットは一般市民よりは政治家や政府関係者や政党を装っており、最終的にボットは敵対者を攻撃したり、フェイクニュースを撒き散らしたりするようなことはなく、害を及ぼしてはいないことが確認された。  2015年8月4日には、ツイッター社によって6000以上のマドゥロ大統領のフォロワーアカウントが削除された。Pew Research Centerによると、ベネズエラはもっともツイッターがアクティブな国のひとつで特に政治に関する話題が多いという。(参照:「The Merccury News」 ”Venezuela government uses fake Twitter accounts for political gain”
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政府によってコントロールされるソーシャルメディア
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