「商店街を潰したイオンが撤退で買い物難民」は全てが真逆だった!?――「イオン撤退でも買い物難民ゼロ」の理由とは

「都市に近い」郊外ショッピングセンターに敗北

 しかし上峰サティが「地域一番店」の座から陥落するのは早かった。サティ開業から僅か3年弱経った1997年、隣接する鳥栖市に九州最大手のスーパー「ラララグループ寿屋」の旗艦店「ジョイフルタウン鳥栖寿屋」(現:フレスポ鳥栖)が開業すると、早くも地域一番店の座は奪われる。その後、1999年には「ゆめタウン大川」(大川市)、2000年には「ゆめタウン八女」(八女市)など近隣都市にショッピングセンターが相次ぎ開業し、商圏は徐々に狭まった。
ジョイフルタウン鳥栖

かつての「ジョイフルタウン鳥栖」(現:フレスポ鳥栖)。JR鳥栖駅前の工場跡に出店したショッピングセンター。開発者の寿屋は2002年に倒産

 とくにサティに大きな打撃を与えたのが、2000年に開業したシネマコンプレックスを備えた「イオン佐賀大和ショッピングセンター」(現:イオンモール佐賀大和、佐賀市大和町)と、2003年に開業した「ゆめタウン久留米」(久留米市)、そして同年にゆめタウン久留米の向かいに開業したシネマコンプレックス「Tジョイ久留米」(久留米市)だ。  これらはいずれも上峰サティよりも規模が大きく、さらにシネマコンプレックスもあるということで、佐賀市や久留米市近郊の居住者を集客の要としていた上峰サティは完全に劣勢に立たされることとなった。  さらに、佐賀市ではイオンよりも中心市街地に近いエリアでも開発が進み、2003年に「モラージュ佐賀」が、2006年に「ゆめタウン佐賀」が相次いで開業。これらはイオンモール佐賀大和や上峰サティよりも佐賀市中心部からのアクセスが容易な立地で、ますます客足は減ることとなる。  この間、マイカルグループは2001年に経営破綻、マイカル九州はイオンの傘下となったのちに2007年にイオン九州に経営統合され、周辺のイオングループのショッピングセンターとの棲み分けも課題となっていた。
ゆめタウン久留米

「久留米市の商業を変えた」と言われるゆめタウン久留米

 そうしたなか、周辺都市での「ショッピングセンターラッシュ」以上に「決定的な打撃」を与えたのが、2009年にイオンの真向かいに開業したディスカウント業態の大型総合スーパー「トライアル上峰店」だった。徒歩圏に出現した競合相手により大きな打撃を受けたイオンは、翌年の2010年にシネマコンプレックス「ワーナーマイカルシネマズ上峰」(現:イオンシネマ)を閉鎖。専門店の撤退も相次ぎ、これ以降、店舗の活性化は放棄された状態となった。  上峰サティは2011年にイオン上峰店と名称を変更、2012年に大型改装が行われたものの、専門店はさらに大きく減り、事実上の「大幅グレードダウン」となり、一般のスーパーマーケットとの差別化も難しい状態となった。また、シネコンやレストラン街などがあった別館は建物ごと解体され、パチンコ店となった。  筆者は同店を何度か訪れたことがあるが、トライアルの開業後は客足が目に見えて減ったように思えた。「グレードダウン」後は2階・3階を合わせて客が数人ということも少なくなく、一部のテナント跡は休憩所として活用されている状態であった。
分布図

佐賀・筑後エリア周辺のショッピングセンター分布図。おおよそ「青」以外の店舗の全てが上峰サティ以降に出店したものとなる

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最大の存在は自らの存在が生んだ!?
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