<医療保険制度の体系>厚生労働省HP内の「健康・医療 我が国の医療保険について」より。加入者数・保険者数、金額は平成29年度予算ベースの数値。75歳以上、65歳~75歳、それ以下で適用される制度が違う
医療費の世代間格差の実態を見てみよう。日本では現役世代の国民すべてが次のどれかに加入する。
▽「国民健康保険(自営業者、非正規雇用者など)」約3480万人、約10兆円
▽「協会けんぽ(中小企業のサラリーマン)」約3830万人、約6兆円
▽「健康保険組合(大企業のサラリーマン)」約2850万人、共済組合と合わせて約5兆円
▽「共済組合(公務員)」約860万人
ご存じの通り、現役世代の窓口負担は3割。だが、75歳以上の「後期高齢者」は別立ての
「後期高齢者医療制度」に約1690万人が加入。規模にして約15兆円だ。
そして保険料では高齢者自身が負担するのは1割だけ。およそ半分を公費で負担(国:都道府県:市町村=4:1:1)。
問題は残りの4割だ。現役世代が負担する健保組合や共済、協会けんぽ、国保からの「支援金」約6.4兆円が投入される。いわば「上納金」だ。
<医療保険制度の財源構成(医療給付費・平成29年度予算ベース)>厚生労働省HP内の「健康・医療 我が国の医療保険について」より(一部改変)。この表は後期高齢者と前期高齢者の財源構成を比較している。本文中にもあるように、後期高齢者の保険料は1割で、この制度にかかる15.4兆円のうち4割が「支援金」という形で「国民健康保険」「健保組合・共済」「協会けんぽ」などから拠出されていることがわかる
高齢者ほど医療費がかかるのは仕方がない。しかし、
64歳以下の国民医療費は一人あたり平均18万円。これに対し、
65~74歳(前期高齢者)では55.4万円、後期高齢者では90.7万円だ。公費負担分では64歳以下が2.5万円、前期高齢者は7.8万円、後期高齢者は35.6万円。後期高齢者と前期高齢者の開きは約5倍である。
「医療費をはじめ、
現在の社会保障制度は財源の面で持続可能なものにはなっていません。世代間の公平性の面からも大きな問題を抱えています。世代間格差を解消するには、より抜本的な改革が必要。待ったなしの情勢です」
財務省が昨年4月に改定した「我が国の財政に関する長期推計」によれば医療・介護費のGDP比は’60年度には約14%に上昇する。’20年度は約9%だから、約5ポイントの伸び。これは約28兆円、消費税率にして約11%に当たる。また、政府は昨年6月、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定。社会保障財源の持続可能性を高めるための検討項目を盛り込んだ。