消費降級は「食」だけにとどまらない。アパレル業界も消費降級に苦しんでいる。上海に住む日本人女子留学生(26歳)は話す。
「無印やユニクロのコンセプトを模倣したシンプルデザインで安価なアパレル雑貨店が雨後の筍のように誕生している。若い女性はブランド品を買わず、そういう店で500円くらいのワンピースやシャツ3、4着を買って着回している人も多い。SNSの普及で友人と集まったり、繁華街に出かける機会が減っているので、それで事足りてしまうんです」
タクシーも、もはや1人で乗るのはぜいたく品というイメージになりつつある。北京に住む日本人駐在員(45歳)の話。
「大手配車サービス『滴滴』が始めた相乗りサービスが大人気。アプリ上で同じ方向に移動したい人同士をマッチングするんですが、うまく相乗り相手が見つかればタクシー代が半額~3分の1以下になる。相乗りで行けるところまで移動し、そこからはシェア自転車に乗り換えるという移動手段が常識となりつつあります」
庶民の間で消費降級の動きが広がるなか、中国国家統計局が公表した昨年12月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比で0.99%の上昇にとどまり、前月の2.7%から大幅に鈍化している。
丸三証券経済調査部長でエコノミストの安達誠司氏は、中国経済でさらに深刻な事態が進んでいる可能性を指摘する。
「中国政府が公表する経済指標は、中立性が疑問視されることが多いですが、相手国のある貿易統計は比較的信用できる。昨年12月の中国貿易統計を見てみると、輸入は前年同期比で7.6%減と’16年7月以降最大の落ち込みとなっている。貿易戦争が続く米国からの輸入は35.8%減って、これは容易に理解できますが日本からの輸入も7%減で、EUからの輸入も減少している。これはもはや、米中摩擦の影響ではなく、国内の消費全体が落ち込んでいることを示している。デフレを疑ってもいいレベルです」
日本経済の救世主といわれる中国人観光客の爆買いも、いつまで続くのか。あまり頼りすぎないほうがいいのかもしれない。
取材・文・撮影/奥窪優木 吉井 透 五月花子
― お金を使わない中国の若者 ―