筆者は同年6月、それまでに判明したことを軸にして週刊朝日に
『街頭デモで安倍政権を応援 旧統一教会系の国際勝共連合が支援する大学生集団「UNITE」の正体』と題する記事を寄稿した。UNITEが教団2世団体であることを示す内容だ。取材の過程で国際勝共連合へUNITEについて問い合わせたところ、同連合広報局からは以下の回答があった。
「UNITEは、本連合の遊説隊勉強会に参加していた学生が、その理念や活動に共鳴して自主的に立ち上げた組織です。メンバー構成については、わかりません。(UNITEの)遊説が行われる場所で、トラブルなどが起きた場合の速やかな解決のために協力するようにと、本連合の地方事務局には連絡しております」
一方、自民党IT戦略特命委員長は取材の申し込みを無視した。
UNITEの活動を各地の地元紙が報じた。
熊本日日新聞『「安保法制に賛成」県内学生ら決起集会』
大阪日日新聞『自国防衛の必要性訴え 女子の視点で改憲叫ぶ』
わかやま新報『憲法改正や安保賛成 ユナイトカンサイ 県出身の学生14人訴え』
どの媒体もUNITEと統一教会との関係には全く触れずじまいというお粗末ぶりだった。
そして迎えた2016年の参院選。3年前と同じく統一教会の組織票によって無名の候補者が国会議員となった。
選挙前、同教団の信者に以下の連絡が回った。
「比例は自民の宮島よしふみさんに入れてください。食口ではありませんが、ちゃんと御言葉を聞いているお方です」
清和会準会員で社団法人日本臨床衛生検査技師会会長の肩書きを持つ宮島喜文への投票を指示するものだ。
「食口(シック)」とは「信者」を示す教団用語であり、
「御言葉(みことば)」とは教祖・文鮮明が語った言葉と教義「統一原理」の総称だ。
投開票日、宮島は12万2833票を得て当選した。宮島より遥かに高い知名度を持っていた現職の堀内恒夫は8万4597万票で落選。内部の情報筋から判明した宮島への統一教会組織票は約6万~7万票。その票数を差し引くと実質、宮島の得票は6~7万票程度とみられ、当選ラインには程遠かった。この時、割を食ったのは、次点で落選した元鳥取市長の竹内功だった。(得票数8万7578票)。
宮島の選挙事務所は統一教会からの支援について「聞いていない」と否定した。
宮島喜文オフィシャルウェブサイトより
2013年の参院選では同じく「当選は厳しい」とされていた安倍晋三肝いりの候補・北村経夫のために統一教会は、安倍首相の依頼で組織票約8万票を投じている。
二度の参院選から、恩恵を受ける候補者の条件が明らかとなった。宮島も2013年の参院選全国比例区の北村と同様、自力では当選ラインには届かない「Cランク」の候補者だった。
知名度の劣る人物が当選を果たすカラクリはこうだ。
統一教会の組織票を投入する候補者の選定は、まず「官邸に近い人物」そして「当落予想では当選ラインに届かないが、統一教会の組織票6~8万票の上積みで当選ラインに届く人物」この2つのファクターを満たす人物が直近2回の参院選で不可解な当選を果たしている。
実はこの時の比例区において、官邸サイドから統一教会の組織票打診を受けた候補者は他にもいたことが判っている。その候補者が断ったため、宮島にオイシイ話が回ってきたのだ。