── トランプ政権が在日米軍撤退を検討しているという見方もあります。
山崎拓氏(以下、山崎):アメリカ・ファーストを掲げて、アメリカの負担軽減を急ぐトランプ政権が、在日米軍撤退に踏み切る可能性は否定できません。
対中新冷戦の火蓋が切られたいま、アメリカにはインド太平洋戦略を強化して、中国を抑えるという考え方もありますが、流れは変わるかもしれません。トランプ大統領の孤立主義的政策が強まりつつあるからです。シリアからの撤退に反対したマティス国防長官も辞任に追い込まれました。トランプ政権は、北大西洋条約機構(NATO)に対しても、防衛費の分担拡大を強く迫っています。日本に対する防衛費分担要求もさらに強まる可能性があります。仮に、在日米軍撤退ということになれば、わが国の防衛政策を建て直さなければなりません。
── そうした事態も想定して、日本の防衛について根本的な議論が必要だと思います。なぜ、国会でそうした機運が出てこないのでしょうか。
山崎拓氏(以下、山崎):かつては、防衛問題に精通した多くの国会議員がいました。ところが、防衛問題についての見識を持った国会議員がほとんどいなくなってしまったからです。安倍首相も含め、戦争を知らない世代が増えたことも関係していますが、選挙制度も大きな原因です。小選挙区制度では、有権者が強い関心を抱く分野の政策を訴えなければ当選できません。大多数の有権者の関心事は社会保障や経済であり、防衛問題ではありません。だから、防衛問題に精通した議員がいなくなってしまったのです。
それでも、若い国会議員たちに言いたい。「国家の根幹である防衛問題に無関心であってはならない」と。
(聞き手・構成 坪内隆彦)
やまざきたく●1972年衆議院議員選挙で初当選、以後12回当選。1989年防衛庁長官、1991年建設大臣、2001年自民党幹事長、2003年党副総裁。2009年総選挙で落選。加藤紘一、小泉純一郎と並ぶYKKの一角と呼ばれた
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