イージス・アショアは不要。安全保障は軍事力だけでは成立しない。<山崎拓氏>

イージス・アショアはもはや必要ない

── 新大綱・中期防は、首相官邸の主導で決められたと報じられています。海自や空自からの具体的なニーズを踏まえてまとめられたものではないように見えます。「必要性を正面から議論せず、机上の空論で決まった」との元海将の声も伝えられています。 山崎拓氏(以下、山崎):今回の大綱は、防衛省ではなく、安倍政権で新設された国家安全保障会議が主導したというのは当たっているでしょう。  1976年に定められた大綱は、冷戦終結後の1995年に初めて改定され、その後2004年、2010年に改定されました。ところが、そのわずか3年後の2013年に改定され、今回さらに改訂されました。改定の間隔が短くなっているのです。誰かが改定を主導しているということです。 ── 安倍政権では、アメリカ製の高額の兵器購入が急拡大しています。 山崎拓氏(以下、山崎):トランプ政権は、対日貿易不均衡の是正を急いでいます。こうした中で、貿易問題におけるトランプ政権の要求をかわす狙いもあって、アメリカ製の防衛装備を積極的に購入していることは否定できません。 ── 安倍政権は、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を2基導入しようとしています。 山崎拓氏(以下、山崎):いまや、わが国の防衛にイージス・アショアは必要ないと考えています。イージス・アショアは、北朝鮮が日本に向けてミサイルを発射してくる危険性があるという前提で導入が決まったものです。ところが、昨年6月にはじめての米朝首脳会談が開催され、朝鮮半島の緊張は緩和に向かっています。また、地元も導入に反対しています。導入を再検討すべきだと思います。 ── 今回、F35Bの大量購入ありきで、「いずも」の空母化が決まったという批判もあります。 山崎拓氏(以下、山崎):新大綱が官邸主導で決まったことを考えると、そうした疑念を持たれても仕方がない面があります。安倍政権は、貿易問題で悪化する危険性がある日米関係を安定させたいと考えているのでしょうが、トランプ政権は後2年で終わる可能性があります。そこまでして、トランプ政権と足並みを揃える必要はないと思います。
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安全保障は「軍事力」偏重では成立しない
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月刊日本2019年2月号

特集1【冒頭解散を撃て】
特集2【トランプに捻じ曲げられた防衛大綱】
特集3【平成の光と影】
新春特別対談【世襲政治を打破する】
新春特別寄稿【女川原発を津波被害から救った男 平井弥之助に学ぶ】
新春特別レポート【子宮頸がんワクチン、日本撤退へ】