米海軍のF35B機 photo by Official U.S. Navy Page via flickr(CC BY 2.0)
現場の意見を十分に聞かず、首相官邸の主導で高額なアメリカ製兵器の購入ありきであらゆる物事が進んでいる安倍政権の防衛政策。
維持費やミサイル費用を含めれば6000億円を超えるとも指摘されるイージス・アショア2基を筆頭に、最新鋭ステルス戦闘機F35を105機などトランプを喜ばせるためにアメリカ製兵器の購入を次々に決め、防衛費は2019年度当初予算案では5兆2574億円まで拡大している。
しかし、その一方で、自衛官が使用するトイレットペーパーは一回当たりの基準を決められていて、実質的に自費でトイレットペーパーを購入していたというほどだ。高額兵器購入の前に、自衛隊員の活動を支える補給や兵站などの基盤を整えるのが先決ではないのか?
22日発売の『月刊日本』2月号では、「トランプにねじ曲げられた防衛大綱』と題した第二特集を組み、安倍政権の歪な防衛政策についてのオピニオン特集を発信している。
今回は、その中から元防衛庁長官であり、自民党の元幹事長でもある山崎拓氏へのインタビューを転載、紹介しよう。
── 政府は、昨年12月に新たな「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画(2019~2023年度)」を閣議決定しました。中期防では、「いずも」型護衛艦をF35Bを搭載できるように改修すると明記しました。事実上の「空母化」です。この決定をどう評価していますか。
山崎拓氏(以下、山崎):空母化と言われていますが、問われるべきは、これまでわが国が一貫して堅持してきた専守防衛政策の変更になるのかどうかという一点です。専守防衛は、「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢」と定義されています。
歴代首相、防衛大臣は、専守防衛の矩を超える武器は購入しない、配備しないという姿勢をとってきました。空母が専守防衛の矩を超えるのか否か、十分な議論をする必要があるということです。
岩屋毅防衛相は、昨年12月19日、海上自衛隊の横須賀基地を訪れて「いずも」を視察し、「常時、戦闘機を運用するわけではない。他国に脅威となったり、不安を与えたりするものではない」と述べています。また、攻撃型空母ではなく、「多用途運用護衛艦」だと説明しています。
しかし、議論は尽くされていません。国会でさらに議論をして、政府は専守防衛政策の変更ではないことを国民に明らかにしなければなりません。海軍力を中心に急速に拡大しつつある中国の軍事力に対処するため、わが国の防衛力を整備しなければならないという考え方は理解していますが、なし崩し的に政策転換するようなことを許してはなりません。
── 長距離ミサイルの確保も盛り込まれました。
山崎拓氏(以下、山崎):これも空母と同じことです。政府は、長距離ミサイルが専守防衛を超えないということを、明確にしなければなりません。
敵基地攻撃能力を保有という議論についても、それが専守防衛の範囲なのかということを、もっと議論しなければいけません。今回の敵基地攻撃能力の議論は、北朝鮮による攻撃への対処から始まっています。そのような発想から出てきた敵基地攻撃能力保有論は専守防衛政策からの逸脱を招く危険性があります。