すたれゆく太陽光発電ブームの残滓<競売事例から見える世界24>

太陽光発電の売電ブームも下火となり、差し押さえ物件入りするケースも珍しくないという

 差し押さえ・不動産執行の現場においても「流行」みたいなものはある。    過去には太陽熱温水器、違法3階増築、オール電化住宅といったムーブメントがあったが、昨今の大きな流れを構築していたものはと言えば、やはり「太陽光発電」となるだろう。  最も加熱していた頃には、まず物件は屋根からの確認作業が行われ、ソーラーパネルのメーカーや枚数、売電による資産価値などが徹底的に調査された。  また、太陽光発電システム単体でのローンが住宅ローンと別に組まれている場合も多く、このようなケースでは物件が差し押さえられる前に、太陽光発電システムを販売していた業者が屋根からソーラーパネルと関連機器を回収していくということも多発していた。  この頃は太陽光発電システム販売業者も契約者の破綻や競売ということはあまり想定していなかったのか、ソーラーパネルを回収する際、イヤガラセのように屋根に空いたソーラーパネル取り付け穴を塞いでいかないという事例も少なくなかった。  そんな太陽光発電ブームも売電価格の下落とともに下火になり、今や残債のある太陽光発電システムであろうがソーラーパネルを回収していく業者は皆無に等しい。  背景には低価格な中国製ソーラーパネルの高品位化があり、回収費の方が高くついてしまうことすらあるためだ。  不動産執行人の関心も著しく低下しており、「あれ?この家、ソーラーパネルありましたよねぇ?」「えっ?あったっけ?」といったやり取りが行われるほど。
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日本ならではの設置業者の苦難
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