スマホにも金、銀などの貴金属やレアメタル(希少金属)が含まれるため、新製品の売れ行きも重要 写真/AFP=時事
一方、歴史的な買い場が到来しているとみられるのが、プラチナ(白金)だ。トーキョー・トレーダーズ・タイムズの小針秀夫氏は、「これ以上、下がりようのないレベルまで下落しており、底値をつけた可能性が高い」と話す。
国際指標となっているNYプラチナ価格はリーマンショック後の’08年秋に1トロイオンスあたり752.1ドルの安値をつけていったん上昇したものの、’18年夏にはこの水準に迫る755.7ドルまで下落した。まさに100年に1度の金融危機レベルにまで売り込まれているのだ。
一般的にはジュエリーの印象が強いプラチナだが、世界でもっとも消費量が多いのは自動車触媒としての用途だ。しかし、近年この需要が大幅に縮小していることも、プラチナ安を引き起こしているそう。
「近年は自動車触媒の需要が安価なパラジウムにシフトしています。下落するプラチナを尻目に、パラジウムの価格は上昇の一途をたどっており、逆転する動きがみられるほど」(小針氏)
さらに、世界的なEV(電気自動車)化の流れで、自動車触媒そのものの需要減少も懸念され、先安感につながっているという。
「EV化が進む過程では、スクラップとなったガソリン車やディーゼル車に搭載されていた触媒からプラチナが大量にリサイクル供給されるという見方もある。それがプラチナ安に拍車をかけています」
そのうえ、自動車需要の次に大きいジュエリーの需要も冴えない。宝飾品消費の多くを占める中国の需要がいまひとつの状態が続いているのだ。目下、プラチナが下落する要因は数多くあっても、反転上昇しそうな要因が見当たらない状態だ。
小針氏は、プラチナ価格がこれより、下がることは考えにくいという。
「現状の価格水準は生産コストすれすれで、この状況が続けば経営に行き詰まる鉱山会社が出てもおかしくない。すでに思い切った減産に踏み切る会社も出ています。過去の値動きを見ても、生産コストを割った局面で貴金属に投資するのは失敗しにくい手法です」