裁量労働制実態調査、やはり「不都合なことは聞かない」設計に! 調査票改定案を緊急提言

裁量労働制に不満がある者のみに問う調査設計

 二度目にこれらの選択肢が登場する問17の(3)も、裁量労働制適用労働者全体に問う設問ではない。問17の(1)で、「あなたは、現在裁量労働制が適用されていることについて、どのように感じていますか」と尋ね、「とても満足している」「満足している」「どちらとも言えない」「不満である」「とても不満である」の五択の選択肢のうち「不満である」「とても不満である」のいずれかに回答した者のみに、その理由を複数回答で問う形となっている。
第4回検討会 資料2-3

第4回検討会 資料2-3より

 これでは、一部の回答者しか回答できない。満足度を問う前に、全員にこの設問への回答を求めた上で、満足度を問うべきだ。先に指摘したように、苦情申し出の有無を問う前に全員に仕事の裁量のなさや業務負荷の高さを問う設問を別途設けていれば、ここで改めて同じ項目を問う必要もなくなる。  「とても満足している」「満足している」と回答した者のみに尋ねている下記の選択肢も、限定をかけずに裁量労働制適用労働者全員に聞くべき項目だ(それぞれ、選択肢にある「・・・ため」の表記を除いている)。 ●効率的に働くことで、労働時間を減らすことができる ●時間にとらわれずに柔軟に働くことで、ワークライフバランスが確保できる ●仕事の裁量が与えられることで、メリハリのある仕事ができる ●自分の能力を発揮しやすい ●能力や仕事の成果に応じた処遇となっている  そのような問い方に変更することによってはじめて、「時間にとらわれずに柔軟に働くことで、ワークライフバランスが確保できる」といった、本来の制度趣旨にあった働き方ができている者が回答者全体のうちどのくらいの割合になるのかが把握できる。今の問い方では、それが把握できない。  実際には、「柔軟に働くことはできているが、労働時間が長い」「仕事の裁量は与えられているが、業務量は過大だ」といったように、メリットもデメリットも当てはまるケースも多いだろう。そういう人が、全体として「満足」と考えるか「不満」と考えるかは、何を重要視するかに大きく左右される。したがって、「仕事に裁量がない」「業務量が過大である」といった「事実」を問う設問は独立した設問として問うた上で、満足度は、それとは別の設問で問うべきだ。
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「不満」が現れにくい問い方
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