裁量労働制実態調査、やはり「不都合なことは聞かない」設計に! 調査票改定案を緊急提言

不都合なことは調査では聞かない?

 過去の調査において政策誘導的な設問が設けられた経緯(参照:前出のハーバー・ビジネス・オンラインの記事)を踏まえ、今回の調査ではそのようなことはあってはならないと小島茂構成員(公益財団法人連合総合生活開発研究所客員研究員)から初回に指摘されたこともあり、今回とりまとめられた調査票案には、あからさまに政策誘導的な設問は見受けられない。  しかし傍聴を続けた中で一番気になったのは、裁量労働制の拡大という政府方針に合わない不都合な結果が出ないように、不都合な結果が出そうな設問はそもそも設けまいとする事務局(厚生労働省)と一部の検討会構成員の姿勢だった。  もちろん、拡大ありきの方針に沿った検討会であるとは事務局は認めない。口実は、「調査回答者の負担の軽減」である。確かに調査に回答する上での負担が大きいと回収率が下がり、精度の高い結果が得られないため、調査回答者の負担の軽減には配慮する必要がある。一方で、この実態調査を踏まえて裁量労働制の法改正の議論が行われる以上、とらえるべき実態はしっかりととらえる必要がある。  しかし第3回の検討会(12月7日)では、設問に対する回答に「(裁量労働制を)廃止すべき」との選択肢を盛り込んではどうかとの小島構成員の提案に対し、この検討会に与えられた課題は現行の裁量労働制の制度の適正化に資する実態調査である(そこまで踏み込むべきものではない)との見解が事務局(厚生労働省)から表明され、さらに鈴木重也構成員(一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部統括主幹)からも「調査項目は政策に反映可能なものするべき。制度廃止という項目を入れることには反対」との意見が表明され、「廃止」については回答の選択肢にも設けられないこととなった。  また、同じく第3回の検討会では、欠席の小倉一哉構成員(早稲田大学商学学術院教授)から、裁量労働制適用労働者と非適用労働者のメンタルヘルスに関わる設問(第3回検討会の資料3-3の問13および資料3-4の問12)の削減提案があり、同じく欠席の川口大司構成員(東京大学大学院経済学研究科教授)からも、裁量労働制適用労働者が自身に適用されている「みなし労働時間」の時間数を答える設問や、労働時間の客観的な把握方法(それぞれ、第3回検討会資料3-3の問4および問5)を問う設問などの削除提案がなされていることが事務局より紹介された。  これらは裁量労働制が「定額働かせ放題」の働かせ方になっていないか、メンタルヘルスの悪化につながっていないかを把握する上で重要な設問だ。これらの削減提案は、検討会の議論の中で退けられることとなったが、この二人の構成員の設問の削減提案は当初、事務局である労働条件政策課課長補佐から早口で口頭で読み上げられるのみで、西郷浩座長(早稲田大学政治経済学術院教授)にさえその削減提案項目が文書で手渡されておらず、座長が「メモが取り切れなかったんですが」とその場で文書を求め、会議中に構成員に追加で文書が配布されたという不透明な経緯があった(傍聴者である筆者は求めたが文書を受け取ることができず、検討会終了時に事務局に求めてその内容を転記した)。  さらに、第4回の検討会においても、改めて川口構成員より、メンタルヘルスに関わる設問を削除する方向での発言があり、第3回検討会でもこれを残す方向で発言した黒田祥子構成員(早稲田大学教育・総合化学学術院教授)が、改めて第3回と同趣旨の残す方向での発言をして設問として残すことになったという経緯がある。
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作為なのか? 回答者を限定する調査設計
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