「それでも私は、言うべきことを言い続ける」<石破茂氏>

「国会の公正な運営」が自民党綱領ではなかったのか

── 外国人労働者受け入れを拡大する入管法改正案は、審議の基礎となるデータに重大な不備があったにもかかわらず、十分な審議を経ず強行採決されました。 石破:入管法改正案は成立しましたが、外国人の方をどう共生社会の一員として迎え入れていくのか、悪質ブローカーの関与をどう排除するのかなど、重要な課題にこれからきちんと対応していかなければなりません。  問題は、政府が「このタイミングでとにかく法案を通さなければならない」といわんばかりに法案成立を急いだことです。スケジュールありきで動いている面があります。  下野した反省に基づいて自民党が2010年に新たに作った党綱領には、「勇気を持って自由闊達に真実を語り、協議し、決断する」「多様な組織と対話・調整し、国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる」と謳っています。果たして現在、勇気を持って自由闊達に真実を語っているでしょうか。多様な組織と対話・調整しているでしょうか。選挙で多数をとれば、もうそれで決まるのだという雰囲気になっているようにも感じます。  2018年9月の自民党総裁選で、私はそうした国会審議の在り方も含めて問うたつもりです。  振り返れば、小選挙区制を導入するときに、根強い反対論としてあったのが、「51対49によって決まったときに、49の意見はどうなるのか」という問題でした。これに対して、私は「51対49で勝利した側が、49の側の意見を無視すれば、必ず次の選挙で敗北することになる。したがって、少数で敗北した側の意見を聞くことが、多数を取った側の責任であり、それが民主主義の在り方だ」と主張して、小選挙区制の導入を推進したのです。 ── ところが、安倍政権は選挙で多数を占めたということで、権力の基盤をつくり、権力が志向するところに全員を従わせようとしています。多くの自民党員もそのように感じているのではないでしょうか。総裁選で石破さんは地方党員票の45%を獲得しました。 石破:党員の一定の支持を得ることができましたし、議員の支持も予想よりは伸びて、73票いただくことができました。自民党の中にも安倍政権に対する様々な意見が存在するということを示せたという点において、総裁選を行った意義はあったのだと思います。  総裁選では極めて厳しい締め付けがありました。齋藤農林水産大臣が「内閣にいて、石破氏を応援するなら、辞表を書いてからやれ」と言われた、というのは、報道の通りです。安倍総理も地方都市に出向かれて、地方議員を集めては、ツーショット写真を撮られていました。逆に地方議員を総理公邸に呼ばれ、食事をされたりもしていました。やはり現職総理からお声がかかれば嬉しいものでしょう。しかし「石破を応援するな」という動きが相手陣営の中にあったのも事実です。
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「ものを言わないほうがいい」空気は問題
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月刊日本2019年1月号

特集1【国会は死んだ】
特集2【激論 北方領土問題】
特集3【ゴーン事件が暴いた日本の病理】
【特別対談】中島岳志VS植村隆 慰安婦問題とどう向き合うか