ここからは推理だ。
だれが、なんのためにこんなことをしているのか?
まず、送り主については、早い段階でピンと来た。
ゴミ箱が3つ届いたときのことだ。私は、過去に似たデザインのゴミ箱をAmazonで購入したことがある。使用済みペットボトルや缶などを入れるために3~4年前に2つ買った。ノンブランドで、デザインがやや似ている。その出店者が怪しい。彼らは、私の個人情報も得ている。ただ、ほかにもノンブランドの衣類を幾度も購入したことはあるので、確実とも言えない。
なんのために? という点は、おそらく
在庫処分だ。
Amazonに出品している業者が、自分のところの商品をみずから買って、過去の購入者相手にギフト発送していると推測できる。一見メリットはないようだが、あるかもしれない。
なぜなら、引き上げた商品を廃棄処分する必要がなくなるからだ。Amazonに商品を置き続けると
保管料がかかり、そこから引き上げても
廃棄費用がかかる。もちろん商品を自分で購入して見知らぬひとにあげているので利益は出ないし、販売手数料もかかる。ただ、それでも
保管+廃棄コストよりも安く収まるということなのかもしれない。
加えて、出店者にはどんなかたちであろうとそれは
売上としてカウントされる。もしかすると、これによってAmazonとの契約におけるなんらかのメリットが発生するのかもしれない(出品者ランキングとか)。
先方とすれば、「ただであげるから、もし使えそうなら使って。いらなければ勝手に処分してね(こっちは処分費用かからなくて助かるわ)」ということなのだろう。
もちろん、不要な商品を送り続けられてきても、困ると言えば困る。とりあえず、古道具屋に持っていこうかとは思うが、HDMI接続もできないプロジェクターなどは古道具屋が引き取ってくれるか微妙だ(除湿機や冷却ファンは売れそうだけど)。それでも残ったものは捨てるしかないが、燃えないゴミの日は月に2回なので面倒ではある。
とりあえず、いま教えている大学の学生にでもあげようかなと思うが、それでもクレヨンを欲しがるひとはいないだろうなぁ……。
<文/松谷創一郎>
まつたにそういちろう●1974年生まれ、広島市出身。商業誌からウェブメディア、社会学論文まで幅広く執筆。現在、『Nらじ』(NHKラジオ第1)にレギュラー出演中。著書に『ギャルと不思議ちゃん論』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)、『文化社会学の視座』(2008年)等。社会情報学修士。武蔵大学非常勤講師。草野球選手(右投げ左打ち・外野手)