強行採決濃厚な「水道民営化」法案について改めて考えてみた

水道民営化とつながっている空港民営化という問題

 実は、安倍政権は次々といろいろなものを民営化しようとしています。  水道民営化は強行採決される見通しとなっているため、今、皆さんが水道民営化の問題に気付き、法案が可決することを止めようと思っても止めることはできないので、ここから先にできる可能性があるとするならば、自分の街の水道民営化は止めること。  そして、水道民営化と並んで問題になりそうなのが「空港民営化」です。既に民営化されている空港の一つに関西国際空港がありますが、先日、台風による高波の被害を受け、空港が閉鎖されてしまった時には「誰がお金を払うのか」ということでモメました。一時的に伊丹空港などが受け入れることになったため、どうにか海外からの観光客を大きく失うということは免れたのですが、電車や高速道路が止まってしまった時には大阪の街からも活気が失せてしまったため、経済的な打撃は計り知れないものになりました。  経済的な影響があまりに深刻なので、政府も関西国際空港の早期再開を急がせましたが、民営化されているものに国が介入するのもおかしな話になってしまうので、もし関西国際空港に「早めに復旧することはできない」とか言われたら大変なことになっていました。その可能性もゼロではなかったのです。実は今、北海道の空港をまとめて民営化しようという話も密かに進んでおり、今もどこかの企業が虎視眈々と利権を握ることを狙っているのです。

水道民営化で懸念されるデメリット

 今、僕たちの水道は明朗会計です。行政に開示請求を出せば、何にどれだけのコストがかかっているのかを知ることができます。  安倍政権になってから公文書が改竄されるようになってしまったので、それを信用できるかという問題はあるにせよ、さすがに今のところは利権がかかっていないと思われるので、きっと正直な数字を見ることができることでしょう。  しかし、もし民営化されてしまった場合には、どうなっているのかがブラックボックスに隠されることになります。日産のカルロス・ゴーン会長の不正が今日の今日まで明らかになってこなかったように、水道運営会社の役員の給与がどうなっているのか、あるいは、その利益を何に投資しているのかは謎になってしまい、水道代が値上がっているのは水道管のメンテナンスにお金がかかっているからなのか、それとも、会社の誰かがアホみたいに高い給料をもらっているからなのかが分からなくなるというわけです。  自治体には開示の義務がありますが、民間企業に開示の義務はないからです。しかも、今は運営しているのが公務員なので、いくら部長だと言ってもバカみたいに高い給料をもらっているわけではないはずですが、これからは1億円だろうが2億円だろうが、好きなだけ給料をもらえるようになります。  現場で働いている下々の社員たちは低賃金でしょうが、役員となったら公務員では実現しなかった高い給料が実現するに違いありません。また、水道は飲める状態に持っていかなければならないため、さまざまな薬品を入れて飲める状態に整えるわけですが、利益を優先して「薬品代が高い」なんて言ってケチることになると、水道水を飲んで病気になる人が出るかもしれません。事実として海外では異物混入や汚濁が起きた事例はアメリカのアトランタ市などを筆頭に枚挙に暇がありません。オーストラリアのシドニーでは、水道料金が4年で倍になった上に、寄生虫が混入するという事故が起きたにもかかわらず、住民にはその事実が隠蔽されていたほどです。  そうなってしまった場合の補償は誰がやるのでしょうか。福島第一原発事故を起こした東京電力を見ても、結局は国が補償することになり、水道会社はただ利益を貪る存在でしかなくなるかもしれません。なにしろ、水道と同じ「電気」という生活に不可欠なインフラを握っている会社に前科がある国なのです。何か事故があった時に責任を取れないものを簡単に民間企業に任せようというのが、そもそも狂った発想だったりするのです。
次のページ 
民営化しても安くならない
1
2
3
4