「自己責任」ですべてを断罪する人々に知っておいてほしいこと

弱者をディスっているあなたが、いつか弱者となり、ディスられるとき

 安田さんが記者会見で答えたこと、さらには外国人記者が安田さんをねぎらって語った世界的常識、および、世界的良識など、それらを読むことができる本(『シリア拘束 安田純平の40か月』)が緊急出版されたようだ。そこには、現政権が安田さんだけでなく邦人救出に消極的なことも読んで取れるだろう。  過去に犠牲になった日本人ジャーナリストはテロリスト集団に殺されたのだろうか? それともこの国に施策で殺されたのではなかろうか?  ジャーナリストだけの問題ではない。俺たち国民の生活環境や労働環境を「自己責任」という言葉で切り捨てて、子ども自身や片親自身や介護当事者や労働者の自助努力に委ね、憲法25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する/国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という責任を放棄した政治家。自分のお粗末なスキャンダルの責任すらとらない大臣級の人たち。そしてその「世も末」の政治に気づきもせず、「国が言っていることは正しい」と思って片棒を担いていでるあなた。  次にいつか切り捨てられるのは、「あなた」だ。そのとき、あなたを救ってくれるのは、地道に活動しているマイノリティの方々であることも書き加えておきたい。いつか救ってくれるかもしれない人たちを、民主主義を守ろうとする人たちを、多様性を守ろうとする人たちを、言論の自由を守ろうとする人たちを、ディスっているあなたがいつかいちばん痛い目に会うことに気づいてほしい。 【たまTSUKI物語 第11回】 <文・撮影/髙坂勝 写真/北村土龍> 1970年生まれ。30歳で大手企業を退社、1人で営む小さなオーガニックバーを開店。今年3月に閉店し、現在は千葉県匝瑳市で「脱会社・脱消費・脱東京」をテーマに、さまざまな試みを行っている。著書に『次の時代を、先に生きる~まだ成長しなければ、ダメだと思っている君へ』(ワニブックス)など
30歳で脱サラ。国内国外をさすらったのち、池袋の片隅で1人営むOrganic Bar「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称:たまTSUKI) を週4営業、世間からは「退職者量産Bar」と呼ばれる。休みの日には千葉県匝瑳市で NPO「SOSA PROJECT」を創設して米作りや移住斡旋など地域おこしに取り組む。Barはオリンピックを前に15年目に「卒」業。現在は匝瑳市から「ナリワイ」「半農半X」「脱会社・脱消費・脱東京」「脱・経済成長」をテーマに活動する。(株)Re代表、関東学院経済学部非常勤講師、著書に『次の時代を先に生きる』『減速して自由に生きる』(ともにちくま文庫)など。
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シリア拘束 安田純平の40か月

2015年6月に取材のためシリアに入国し、武装勢力に40か月間拘束され2018年10月に解放されたフリージャーナリスト・安田純平。帰国後の11月2日、日本記者クラブ2時間40分にわたる会見を行い、拘束から解放までの体験を事細かに語った。その会見と質疑応答を全文収録。また、本人によるキーワード解説を加え、年表や地図、写真なども加え、さらにわかりやすく説明。巻末の独占インタビューでは、会見後に沸き起こった疑問点にも答える