肱川水害はダム最優先の治水行政による行政資源の配分の失敗の産物

比較的被害は少なかった西大洲地区

 西大洲地区は、東大洲地区と異なり大きな外水氾濫に見舞われませんでしたが、強力な排水ポンプによって守られたにもかかわらず内水氾濫で一部の地域を除き床下浸水から床上浸水に見舞われています。  また、愛媛大学による報告にもあるように、堤防一箇所で破堤の前兆であるパイピングが認められており、危険な状態であったことがわかっていますが、今回はそれ以外の異常は見られません。(参照:西日本豪雨災害 肱川堤防被害調査報告メモ 調査日 2018 年 7 月 11 日(水) 愛媛大学
損傷した堤防

堤防がパイピングで損傷した箇所2018/11/12撮影

 ただし、地元の方によると樋門からの漏水や、水門を閉鎖したあとの水路からの内水氾濫によってじわじわと後ろ(支流の久米川上流)から水位が増してゆき、大洲郵便局あたりまで路面が水没したとのことで、当時の映像や写真を見ると、大洲郵便局の郵便車が高台に避難していたのがわかります。

「ナイアガラの滝のように水が溢れてきた」西大洲柚木地区

 しかし、西大洲柚木(ゆのき)地区は様子が異なり、町並みに水害被害が見られます。柚木地区にある肱南(こうなん)保育所でこの地域の被害の大きさがわかりました。肱南保育所には平日日中にもかかわらず子供の姿はなく、閉鎖されていました。この保育所は、観光地でもある臥龍山荘(がりゅうさんそう)に隣接しており、よく通りかかったのですが、いつも大勢の子どもたちの声が響いていました。  静まり返った建物をよく見ると内部は床上浸水でひどく傷んでおり、窓を見ると一階窓の半ば以上まで浸水痕があります。地元の方によると、ナイアガラの滝のように堤防を水が溢れてきたとのことで、柚木地区一帯は、小柄な人の背丈ほど沈んだとのことでした。  柚木地区では、11月12日の時点であちこちの家屋から修復工事の音が聞こえますが、一方で放置されている家屋も見られます。  柚木地区は、肱川が右に曲がっている場所の左岸にあたり、国交省の資料*によると暫定堤防区間(堤防の低い区間)となっています。更に暗渠と嵩富川が左岸より肱川屈曲部に合流しているために肱川の越流だけでなく、内水氾濫とバックウォーターに見舞われたものと思われ、浸水地域は内陸部にひろがっています。(参照:第1回 野村ダム・鹿野川ダムの操作に関わる情報提供等に関する検証等の場 平成30年7月19日 四国地方整備局肱川(国管理区間)浸水エリア図の公表 平成30年8月10日大洲河川国道事務所(国土交通省)
肱川の屈曲部

肱川右岸より柚木地区を望む 右後方は大洲臥龍の湯 直進してきた肱川は、ここで大きく右に屈曲しており、左岸には瀬が発達している。7/7水害では、水が左岸に押し付けられ、「ナイアガラの滝」のように溢れ、柚木地区を襲ったとのこと。植生の破壊にその痕跡が見える。2018/10/1撮影

 柚木地区は、とりわけ標高が低いというわけではありませんが、堤体がやや低く、支流や暗渠の水門や排水施設も見られないため、まさに水防の弱いところを突かれたと言えるでしょう。  柚木地区の対岸、妙法寺地区は、堤防が柚木地区に比しても低い暫定堤防区間ですが、この区間も激しい浸水に見舞われています。水は流体ですから、わずかでも弱い所があればそこから流れ出します。
妙法寺地区

浸水被害の痕跡を残す妙法寺地区 妙法寺地区暫定堤防上より撮影 2018/10/1撮影

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やはり治水整備の遅れが……
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